道案内

98 本当にあった怖い名無し sage 2012/05/28(月) 22:49:12.85 ID:hYJcgiby0
帰りはやっぱりペースは早く午後3時半に峠につく。流石に疲れ、太ももの骨もなぜか痛い。足を上げるとかなり苦痛だが歩くことには支障はない。 
この時の痛みは今も直ったり再発したりが続くのでそういう意味でも俺にとって嫌な思い出が残る山となった。 
まだ3時半。このペースなら十分4時すぎにはつくだろうとおもった。しばらく降りていくと嫌な予感がしてきた。こんな急な道あっただろうか? 
あったような気もするし違うような気もする。しばらくあたりをみまわし、少し歩いたが途方にくれた。やばいなあ、でもなんとかなるはず。 
そう思っているとなんと、人が向こうからやってきた。その方向は俺が気づかなかった道だった。ほっと安心した。その人はすたすた歩いてくると 
俺に不意にたずねた。「今日はどこから?」おれはまず答えて、次はこの道から登ってきたのですか?ときくとそうですよ。と答えた。

見た感じだとその人は俺よりも軽装備にみえた。というか、何も持ってないような記憶がある。しかも俺を見てるようで違う所を見ている気がした。 
俺は疑問に思ったことがあった。これから登るんですか?と聞くとまた、そうですよ。と一言。これからだと日が暮れそうですけどと、ちょっとおせっかいだが 
聞いてみるとそうですね。大丈夫です。とまた答えた。口数が少ない人だ、つかれてるのかな。でも、俺が気にすることでもないし道がわかったのだから 
俺も遅くなる前に帰りたかった。別れをつげ、俺はその人が来た道を進んで言ってみた。 
だが、ほんの少し歩くと道らしきものはなくなった・・・。折れた木々。大きな岩や急斜面。少し考えたがここはやはり行き止まりだと思わざるえなかった。 

さっきの人はまだいるだろうか?俺がまた間違えたのか、からかわれたのか確かめるためにもう一度追いかけて聞こうと思いさっきの道まで戻ってくる。 
もういなかった。俺は大きな声で呼んで見た。返事はない。どうしよう、さっきの人を急いでおいかけて登っていくか・・?でも・・・ 
おれはまたその人がきた道に行ってみた。いや、道?違う。ここはそもそも人が歩くような形跡がなにもない。ただ少し歩きやすかっただけ。 
そしてその先はやはり行き止まり・・・。また来た道に戻る。正直ギョっとした。さっきの人がまたいた。ここにきて怖くなった。なんでまた普通にとそこにいるんだろう。 
「気になってまた降りてきたんです。わかりにくいかなと思って」とその人はいった。俺が呼んだ声で降りてきたわけではないみたい。 
そのひとは言った。「もしよかったら案内しましょうか」。少しとまどった。でも今の俺はこの人を頼るほかない。ついていってみることにした。

やはりさっきの道なのだが、これがまた気づかなかった。細い岩と斜面のあいだに歩きやすい道が続いていた。だが登山道といえるほどいい道じゃない。 
そのひとは実にスタスタあるくのだが俺はおっかなびっくり歩いていた。少し離れたがその人は時折、後ろを無言でふりかえり俺がついてくるのを 
確認しながら先に進んでいく。本当にこの人についていくべきなのか。そもそもこの人はこの時間帯に荷物もなく、なぜここにいたのだろう。地元の人なのだろうか? 
幽霊にしてはあまりにも立体感がある。でもだんだん降りているし方角も間違いない。ついていくしかなかった。その時の俺の心境はそれだけ。 

危なっかしい道ともいえないようなよくわからない斜面を降りていくとやっといい道が見えた。本当に良かった思わず、本当にありがとうございます!とその人に呼びかけた。 
「ここからはわかりますね。しっかりしていますし大丈夫だとおもいます」というようなことを言ってまた登っていってしまった。 
あなたは今からどこに?と思わず聞いた。「ヘイジのダンです」 とまた一言言って会釈して登っていった。ヘイジの段は峠の分かれ道で高ドッキョウとは反対の山。 
俺なんかより全然道を知っているこの人なら大丈夫なんだろうなと思って俺は下りて言った。
やがて入り口の茶畑が見え、そこにちょうど農家の人がいた。とりあえず挨拶をしたが、気になったので 
さっきの人について聞いてみた。「え?俺はここにずっといるけどお兄さんしかみたことないよ・・第一今から登ったら真っ暗になっちまうよなあ」 
荷物も持たずに登る人なんていままでも見たことないし、そんな人がいたら覚えているはずだよ。と言っていた。でも確かにあの人はあそこにいて迷いかけた俺に 
道を教えてくれたんだよ・・いまでも不思議なこと。あれから5年間たつけどこれより不思議なことはない。あの人は誰だったのか。助けてくれたのは確かだ。 
きっとちゃんと生きている人のはず。丸い顔で口数がすくないけど優しい感じだった50代くらいの男性だった。またいつか登りに行きたい。今度はヘイジの段と言うところにいってみたいと思う 

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