カーテンの隙間

421 名前:みん :03/04/30 14:08
今年の正月の話です。 
持病の喘息がひどくなり、病院へ行きましたが、意識不明となり、 
救急車で大きな病院へ搬送されました。 
ICUに数日いたあと、一般病棟へ移されました。 

病室は4人部屋で、右手前に私のベットがあり、 
左手前のベットは空き、右奥、左奥は寝たきりの老婆でした。 
左奥の老婆には、日中付き添いの女性がいましたが、 
消灯時間になると帰宅して、病室には3人だけになりました。 

夜もふけてくると、なんだか嫌な感じになってきました。 
ベットをカーテンで覆って眠りを待っていましたが、 
パタパタと病室を行き来する足音が聞こえてきました。 
足音は入り口から左奥のベットへ、何度も行き来します。

最初は付き添いの女性かと思ったのです。日中の付き添いは帰りましたが、 
夜間は違う付き添いの方が来ているのかと思いました。 
それにしてもうるさいです。走り続けているのです。 
左奥の老婆の病状が悪化したのかと思いましたが、看護婦の 
シューズの足音ではなく、スリッパの足音なのです。 

私は意を決して、ベットを覆っているカーテンを少し開け、 
足音の正体を確かめようと思いました。 
入り口からパタパタと足音が聞こえてきました。 
私は近づいてくる足音を確かめ、カーテンの隙間から目を凝らしました。 
足音は左奥のベットへ入っていきました。 
しかし、私は誰も見なかったのです。 
正体はなく、足音だけが私の目の前を通り過ぎていきました。

私はめまいがしました。確かに足音と、左奥のベットのカーテンがゆれて 
誰かが入っていくのがわかるのに、人物が見えないのです。 
頭がぼおっとしてきました。 
すると左手前のベット、私から見ると向かいのベットに人の気配がします。 
いすに座っている男性の気配です。ありありと感じます。 
私は怖くて、とてもそれ以上カーテンを開けることができませんでした。 

私は看護婦を呼びました。 
「この部屋には、何人ひとがいますか?」私は朦朧とする頭でたずねました。 
看護婦は引きつった顔をしました。 
「3人ですよ。あなたと、お隣の方とそのお向かいの方です」 
「左奥の方の付き添いの方は?」私は聞きました。 
「もうとっくにお帰りになりました」看護婦は顔をゆがめました。

「眠れないのです、薬をください」私はそういって、薬を飲み寝ることにしました。 
眠りについている間も、絶え間なく足音が聞こえ、男性の気配がしましたが、 
もうそのことは気にしないことにしました。 

私は精神科へ通っています。幻聴や幻臭がすることがあります。 
だからそのことは幻覚だと思うことにしました。 
でも私の幻覚が、あれほどひどく出たのは先にも後にも、その時だけです。 

基地害のたわごととお聞き捨てください。 

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