歌う女

533 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/03/30 01:25
何年か前、通勤で都営新宿線使ってた。その朝も普通に混んでた。 
俺は車両の真ん中あたりで立っていた。 
新宿でまた人が乗ってきてかなり満員になり、俺の背中に人が密着してきた。
香水とか感触で女だと分かった。
俺の首筋に女の息がかかった。
ちょっとラッキーと思った。
だけどそううまくは行かなかった。 
電車が走り始めたら歌が聞こえてきた。「のんたNとい~っしょ、いっしょに 
おどろぉ~ のんたNとい~っしょ、いっしょにうたおぉ~ 」背中の女が 
歌ってる。なんだこの女?俺は苦笑いしてた。 
「いつでもぴょんぴょんぴょんぴょん! どこでも~」女は歌い続けてた。 
で、「~はろーはろーはろー」と、一曲歌いきった。ヤレヤレと思った。 
でもまた女が「のんたんと~」歌い始めた。淡々と、でもほんとに楽しげに。 

次の駅に着いて扉が開いたが、俺の居たあたりは人の動きがない。女は俺に 
密着したまま歌い続けた。 
「~はろーはろーはろー」二回目が終わった。もう勘弁して欲しかった。 
振り返って文句を言おうと思った瞬間、女は三回目を歌い始めた。まるで俺に 
歌って聞かせるように。俺はさすがにやばいと思ったが、どうしていいか分か 
らなかった。ここで歌を止めさせたら刺されるんじゃないかと思った。 
女はそのまま歌い続けた。俺はホントに冷や汗が出て固まってしまっていた。 
そして電車が神保町に着いた。女は何回目かの「のんたNといっしょ」をちょ 
うど歌いきり、何事もなかったように降りていった。すれちがいざまに女を 
見たが、取り立てて美人でもないごく普通のOL風だった。 
サイコさんなのか躁女なのかは分からなかったが、俺本人にはかなり怖い体験 
だった。 
今となっては笑い話なんだがね。 

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