祖母の掛け時計

182 :本当にあった怖い名無し[sage] :2009/11/16(月) 00:58:36 ID:fx9lUUBGO
スレチかなとは思いましたが、怖いと言うより少し不思議な話だったので、 
ここに投下させて貰います。
19歳の夏、祖母が癌で亡くなりました。 
自分は本当に祖母の事が大好きで、大好き云々というよりもはや依存としかいえない位のベッタリ振りで、 
その所為で母に辛い思いをさせた程でした。

だからこそ祖母の余命が幾ばくと知った時は、本当に動揺しました。 
何をしていても手につかず、祖母のことを考えると人前でも涙を堪えるのが大変といった有様。 
ずぼらで出不精な自分が、朝の登校前と夜の帰宅時に 
毎日欠かさず、面会時間ギリギリまで祖母と過ごし、 
叔母にたしなめられたりもしました。

祖母には告知をしていなかったので、医者や親族が「快方に向かっている」と祖母に優しい嘘を吐いてくれました。 
自分はもちろんそれが真実ではないと知っていたのですが、 
祖母が小康状態になる度「ひょっとして…」と淡い期待を抱き、 
それでも時が経つにつれ段々と衰弱していく祖母を見て、胸が千切れる思いをしました。

そしてとうとう最後の時、 
病状が悪化してから移動した個室で、親族みんなに見守られながら 
祖母は亡くなりました。

祖母が亡くなる前はあれほど悲しくて悲しくて仕方がなかったのに、 
実際その時を迎えると、初めこそ(失礼な話ですが)もしかして祖母の魂?が側にいるかもと思うと凄く恐ろしかったけれども、 
後に残ったのはひどい虚脱感だけでした。 
涙を流すこともなく、ただ無くなった何かを埋めるように、 
学校をさぼってもぬけの殻になった祖母の家に日参していました。

そんなある日、ふとしたことに気付きました。 
祖母の寝室にある時計、――飾り時計しかないこの家で唯一実用的な掛け時計が、止まっていたのです。 
勘のいい方なら既にお気づきでしょうが、その時計は祖母の亡くなった時間を示していたのです。

そう、余りにもお約束の展開です。怪談としてはありふれていて珍しくもなんともありません。 
自分も幼少期から怪談が大好きで、長ずるにつれオカルトサイト巡りや動画像漁りをするようになった人間です。 
こんな事態に遭遇したら真っ先に、祖母の死と関連づけてもおかしくありません。 
しかし自分にはオカルト好き以上に厄介な特性がありました。 
それは“超鈍感”です。
止まってしまった時計を見て、あろうことか 
「あ~気付かなかった、学校さぼってると時間なんて関係ないもんなw」と、 
何にも考えず電池を交換して時計を直してしまったのです。 
このバカ孫!と祖母が思ったかどうかは分かりませんが、翌日また例の時間で止まっていました。 
遅くともここで疑問を抱けよといった感じなんですが、 
その日は分針をグリグリしたら直ったので「お、我ながら手先が器用だな!」と悦に入ったりしていました。

その後も2~3日、そんなやり取りを繰り返しましたが、 
4日目あたりでついに、電池を替えたり針をグリグリしてもウンとも寸ともいわなくなったので、 
「ああ、壊しちゃったか」と、ご丁寧に止まっていた時間に戻してから放置し、 
それ以降その時計に触れることはありませんでした。

ようやく、あの時計が止まったのには何か意味があるのでは?と思い至ったのは、 
数年後、実家の掛け時計が壊れたので変わりに例の時計を使ってみようと思った時でした。

自分は失言をした時も、皮肉や嫌みを言われた時も、告白をされた時も、 
一年ぐらい経ってから、もしかして?と思って悶絶しながら転がり回るのが常です。
この発見をしたときも、 
もしかして自分が時計を直す度にばあちゃんが必死こいて止めたのかなとか、 
そう言えば気にしてなかったけど、ばあちゃんちでさぼって昼寝してるときに限って必ず金縛りにあったのは、 
もしかしてストレスだけが原因じゃないのかなとか、 
霊感0なのにその時期にだけ集中的に変な体験したたのは何か意味があるのかなとか、 
次々に色々と思い出されてきて、本当に情けないような申し訳ないような 
泣きたいような笑いたいような気持ちになりました。

どれも理論的に片付けられない訳ではありませんが(だからこそ気付くのが遅れたのだし)、 
もし、祖母が何か伝えたいことがあったのだとしたら本当に謝りたいです。 
金縛りも変な体験も全く無くなった今となっては遅いでしょうが… 
あんなに大好きで、愛してくれたのに!ばあちゃん、馬鹿な孫でごめんよ…

無駄な長文乱文オチナシ失礼しました。

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