118 :たっぺぇ  ◆bx6hWDVQmQ :2006/07/22(土) 23:42:38 ID:8gWpgJ2y0
ずいぶん前にどっかのスレに書いたから、 
初出ではないんだが・・・ 
一匹の猫のはなし。 

ばあちゃんの父ちゃんが体験した話だ。 
まだ、ばあちゃんが子供の時のこと。 
ばあちゃん家では一匹の猫を飼っていた。 

ばあちゃんの父ちゃん(以下 田吾作(仮名))は 毎日畑仕事に行くんだが、
終わりころになると、きまって 猫が向かえに来た。
で、一緒に家まで帰るんだが、 その日はいくら待っても猫が来ない。
しょうがないので田吾作は一人で家に帰ることにした。 
すると、途中の道で一匹の猫が走りよって来た。 
よく見ると田吾作の家の猫だ。 

たわむれに、田吾作が 
「おまえ、どうしたんだ今日は?ずい分遅かったじゃないか?」 
と話しかけると、猫はすまなそうに 
「はぁ、今日は『おじや』が熱かったぁ。 
 だから時間がかかったぁ。」 
と言ったように聞こえた。田吾作は驚いたが、気のせいだと いうことにして、
ひとまず猫と一緒に家路を急いだ。 
家につき、ふと思い出してそれとなく女房(ばあちゃんの母ちゃん 以下ヨネ(仮名))に猫が遅かった旨を伝えると、 
「あぁ、そういえば今日は、やたらとおじやを 
 時間かけて食べてたねぇ。それで遅くなったんでしょう。」 
という返事が返ってきた。田吾作は再度驚いたが、 
さっきのは鳴き声が偶然そういう風に 
聞こえただけだ、と思い込み、自分を納得させた。 

それから数日は何事も無く過ぎ、ある深夜のこと。 
田吾作は何かの気配を感じて目を覚ました。 
そっと気配のするほう、障子をあけて見ると、 
猫が手ぬぐいをほっかむりして、日本足で踊っている。 
仰天した田吾作は、ヨネを起こし、二人でその光景を見ていた。 

あくる朝。もう猫をこの家においておくことはできない、 
と思った田吾作とヨネは、にぎり飯をふろしきに包み、 猫に背負わせ、 
「すまねぇ。おまえは化け猫だ。人間の俺らとは 
 一緒に住めねぇ。わかってくれ。」と泣く泣く山に放した。 
猫は一度振り返り、「にゃん」と短く鳴くと、山に消えていった。 
その後、何度かばあちゃんの家では猫を飼ったが、 
こんな不思議な猫は二度とあらわれなかったという。 

このはなしは、幽霊や妖怪話をあまりしなかった 
俺のばあちゃんが、「これは本当の話だ」といって 
俺と俺のおふくろ(ばあちゃんの娘)に 何度も何度も聞かせた話だ。
いかにも作り話みたいだが、 このはなしを話すときの、あのばあちゃんの真剣な顔を思い出すと、 
本当にあったんじゃねーかなぁ・・なんて思えてならない。 

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