トイレ

407 名前:コピペ1/4 投稿日:03/06/05 21:50
真一は朝から腹の具合が良くなかった。 
近所の公園に犬を散歩させるために行った時に、真一は猛烈な腹痛に襲われた。 
「ヤバイ!出そう!出ちゃう!」 
真一は公園の公衆トイレに駆け込んだ。 

お世辞にも手入れが行き届いているとはいえないこのトイレで、用を足すのは、潔癖な真一にとって屈辱的だった。 
「クソ!なんでこんなに汚いんだよ。しかも和式かよ!」 
真一は和式トイレが大嫌いだった。しかし、キリキリと痛む腹の前に、降伏せざるを得なかった。 

和式トイレで不安定なポーズで用を足していると、もう一人お客が入ってきた。 
この公園のトイレはやや奥まった、人気のないところにあり、実際にハッテン場としても使われることがあるという 
噂も実しやかにささやかれているため、真一は身構えた。 

個室のドアと壁の隙間から覗くと、30代半ばくらいの中肉中背の男が、 
大きな麻袋を持って、小便をしているのが見えた。 

「良かった。ホモの人じゃない。」 
真一は安心して出ようとした。しかし、そのとき再び便意が襲ってきたのである。 

「またかよ・・・。」 
真一は再び情けない格好で便器にしゃがみこんだ。 
今度は長くなりそうだった。ふと、真一は外の男のことが気にかかった。 
もう一度壁と扉の隙間から覗いてみて、真一は思わず叫びそうになったが、必死でこらえた。 

なんと、外の男が、麻袋の中から女の死体を引きずり出していたのだ。 
真一は細い隙間から目を離せなくなった。 
男は個室に真一がいることに気付いていないようである。 
女性の死体の次に男は鋭利なナイフと、のこぎりを取り出した。 
そして、女性の首にナイフを突きつけると、一気に引いた。 
女の首にパックリと裂け目ができ、そこから血がどろりと流れ出た。 
「この男・・・。」 
真一はこの男が何をしようとしているか理解した。 
男はここで、女性を解剖しようとしているのである。 

真一はことの異常さに驚愕した。 
どうやら男は気付いていないようである。 
絶対に音を立ててはならない。男が全て終えて、このトイレを出て行くまで・・・。 

男は女性の首をナイフ一本で器用に切断した。 
まるで魚をさばくかのような手際の良さだ。 
「こいつ、慣れてるのか?」真一は改めて恐怖を憶えた。 

その時、またしても真一の腹が暴れだした。 
「くそ!こんな時に・・・」 
真一はどうすべきか迷った。今便をしたら、音が出てしまうかもしれない。 
そうなったら男に気付かれてしまう。しかし、腹は限界を迎えていた。 
真一の額は冷たい汗でいっぱいだった。 

その時、遠くから飛行機がやってくる轟音が響いてきた。 
米軍基地から飛び立った戦闘機である。 
真一は町の米軍基地に初めて感謝した。 

戦闘機の音が真一の排泄音をかき消しているうちに、真一は全てを出し切った。 
しかし、流石に水を流すのは躊躇われた。 

排泄が終わり、俺は落ち着きを取り戻した。 
見ると女性は半分ほどばらばらにされていた。 
吐き気がするほどの凄惨な光景であったが、自分自身の命がかかっている。 
身動き一つせず、じっと見つめていた。 
ふいに、男の手が止まった。 
「・・・何か臭うぞ?」男は低い声でそう呟いた。 
「マズイ!俺の落とし子の臭いだ!ばれる・・・!」 
真一はその時、死を覚悟した。せめて下半身丸裸では死にたくないと思い、ズボンをはいた。 

それまでしゃがみこんで解剖にいそしんでいた男がゆらりと立ち上がった。 
「助けて!まだ死にたくない!」真一は祈って目を閉じた。 

「ハハハ・・・」真一はびっくりして目を開いた。 
扉は開いていない。上から覗いているのかと思い、恐る恐る上を見たが、上にもいない。 
真一はもう一度壁と扉の隙間から外を覗いた。 
男は立ったまま笑っていた。 
「こいつ、こんなにクソが溜まっていやがる。道理で臭うはずだぜ」 
良かった・・・勘違いしてくれたみたいだ。真一はホッと胸をなでおろした。 
しかし、気の緩みに乗じて、「プッ」とガスが漏れてしまった。 
途端に男がキョロキョロとあたりを見渡し始めた。 
「やばい、今度こそ殺される・・・」真一は気を緩めた自分を呪った。 
「何だ今の音は?」男は低い声で呟いた。 
その時、ちょうどトイレの前を猫が通りかかった。「にゃ~ん」 
「何だ、猫か・・・。脅かしやがって」男は安心したようで、解剖を再開した。 
「ああ、また助かった。このまま何事もなく終わってくれ・・・」 
真一はすでに全身汗びっしょりだった。 

その後、どれくらい時間が過ぎただろう。 
男は解剖を終えると、持って来た麻袋に、すでに肉塊と化した女性を詰め込むと、 
血で汚れた床を水で洗い、出て行った。 
それから暫く、真一は動けなかった。やがて 
「ああ、やっと出て行った。俺は助かったんだ。この町に殺人鬼がいるなんて信じられないし、恐いけど、 
でも、俺は助かったんだ!」 
そう叫ぶと、真一はドアをバタンと開けて、外へ飛び出した。 
まぶしい太陽、日の光を浴びて輝く木の葉、全てが美しく見えた。 
公園の入り口に繋いでいた犬を連れて帰路に着こうとする真一の肩を、誰かが叩いた。 

振り向くと、先ほどの男が笑顔で立っていた。 
 

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