妖しき友人

うみんちゅさん  2008/09/16 01:13「怖い話投稿:ホラーテラー」
クラス替えが終わり、新学年が始まった。

クラスの皆とも馴染んできたある日、Aが『オレには超能力があるんだ。見せてあげようか?』と言ってきた。
『超能力?なんだそりゃ?』と訝しむ僕に、『まぁ透視能力というか、君が思って念じたことを読みとれるんだ。実際にやってみせよう。』とAは提案してきた。

昼休み、僕とAは机を挟んで向かい合って座った。
『ここにペンとメモ用紙を用意した。オレがいろんな事を質問するから、答えを考えてくれ。』とAは言った。
『分かった。』
『よし、じゃあ始めようか。まず手始めに…そうだな…旅行してみたい国は?』
『う~ん……旅行してみたい国…うん、決めた。』
『決めた?OK。おっと待って!まだ言うなよ!読みとるから。』
Aはそう言うと、何やら僕の顔を見つめ、思いついたかのように手の中に入れたメモ用紙にペンを走らせた。
『まぁ十中八九この国だろ。』そう言いながら、メモ用紙を折りたたみ、無造作に机の端にその紙を置いた。
『じゃあ答え合わせだ。どこの国かな?』とのAの問いに、『イタリア。』と僕は答えた。
『やっぱり!』とAは満足気な顔をした。
『じゃあ次の質問。好きな教科は何?』
僕は少し考え、ひねくれた答えを思い浮かべた。『決めたよ。』
『うん、じゃあまた読みとるからな。』
そしてAはまた手の中のメモ用紙に何かを書き付け、折りたたんで先程と同じところに紙を置いた。
『で、答えは?』
『音楽。』
『案の定、変わったことを思い浮かべてたなぁ。』Aはそう言うと、次の質問に移った。『好きな芸能人は?』


このような流れで4個ほど質問を終えると、『じゃあ、最後の質問。う~んと…質問を考えるのも大変だな。んじゃ、オレの超能力を疑ってる?』
この質問は、もちろん“ハイ”だ。
『いいよ。決めた。』
『OK。じゃあ書くよ。』
書き終わると、Aは同じようにして折りたたんだ紙を山に加えた。

『以上で終わりだ。確認してくれ。』
そう言うとAは紙の山を僕の方に押しやった。
試しに一つ開けてみると、そこには「おんがく」の文字が。
まさかと思い、僕が全ての紙を開くと…
「あやせはるか」「yes」「イタリア」「パンダ」
『!!全部当たりだ!』
『なっ、超能力があるって言ったろ?』
Aがいたずらっぽく微笑むと、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

呆然とする僕の前で、机の上の紙がカサカサと風に揺られていた……

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