みほちゃん

666 :本当にあった怖い名無し :2008/10/19(日) 05:05:04 ID:Pubegn7lO
看護学生の頃、
友達(看護学生ではない。)と遊びに行った先で交通事故を目撃しました。
勉強中の身ではあったのですが、救急隊員が駆け付けるまでの間、
友人の手も借りて、車にはねられた女の子の応急処置をしました。やがて救急車が到着し、女の子は一人だったので、
私達も一緒に救急車に乗り込み病院へ。
しかし女の子は病院へ向う途中、
出血多量(その後、内臓破裂も判明)で救急車の車内で亡くなりました。
私はショックで看護師になるのを躊躇いました。
しかし、あの場に居合わせた友達や、
看護学校の友達や講師の励ましに背中を押され、
私は無事に学校を卒業、看護師の資格も取得しました。

看護師1年目で配属されたのは外科病棟でした。
覚えきれないほどの病名や専門用語、毎日のように訪れる患者さんの死、
先輩看護師や医師からのイジメや暴言。精神的にキツクなってきたある日、
夜勤明けに病院の屋上で景色を眺めていました。
暫し景色を楽しみ、
後ろを振り返り金網に寄り掛かると、見覚えのある顔が…。
看護学生時代に助けた、あの女の子でした。
衣服や顔も血だらけでしたが、救急車の車内で顔の血は拭き取ったので、
顔は忘れませんでした。
名前もそのときに聞いてあります、みほちゃん。

みほちゃんはあのときの服のまま(血はついてません)、ただただ微笑んでいました。私がみほちゃんと声をかけると、消えてしまいました。
それからというもの、みほちゃんは病院のあらゆる所で現れました。

病棟の廊下、ナースステーションの前、病室や職員用食堂の窓際。
いずれも微笑んですぐに消えるだけ。
共通していたのが、私が精神的に肉体的にしんどいときや、
重病患者さんの治療やケアで腕を試されるようなときでした。

それから数年後、私は主任を任されるほどになりました。主任として初めて出勤する朝。
少し早めに私服で更衣室に入ると、私のロッカーの前にみほちゃんが立っていました。
私が近づくと、みほちゃんは笑顔でこう言いました。
「みほを助けてくれて、ありがとう。
みほね、あのときお姉ちゃんの声、死ぬまでずっと聞こえていたんだよ。
『大丈夫だよ』『あともうちょっとで病院だからね』
処置しながらずっと言ってくれたよね。」
私は当時を思い出して泣きました。

「ほら、お姉ちゃん。時間だよ?
苦しんでる人が、お姉ちゃんを待っているよ。
お姉ちゃんのこと心配で傍にいたんだけど、
もう、みほも行かなきゃ。
お姉ちゃん、ううん、看護師さん。
ありがとう、そしておめでとう。」

そう言うと、みほちゃんは微笑みながら消えました。それ以来、一切姿は見かけなくなりました。

私は現在、小児科病棟に配属され、師長として頑張っています。
みほちゃんのことは一生忘れません。

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