天井裏に何かがいる
チャットで知り合ったタカシにそんな相談を受けたのはついこの前だ。 話を聞いてみると、前々から天井裏から物音がしていたのだが、最初はネズミか何かだと思っていたらしい。 でも、その音はネズミが走り回っている音とはとても思えるものではなく、何かが引きずられるような、そんな音だと言うのだ。 タカシの部屋の押入れには、天井板が外れるところがあるらしく、 ある日、そこから天井裏を除いた事もあるらしいのだが、その時は何もいなかったというのだ。 しかし、日に日に大きくなる天井裏の音に耐え切れず、俺に相談したらしい。 (身の回りの人に相談すれば良いだろう) そう思っても見たのだが、どうやらタカシはヒキコモリらしく、 周りに相談できる友達もおらず、親も自分の言う事など信じてくれないとのことだった。 「最近じゃ、寝るのも怖いんだ・・・」 日に日に大きくなる音に、タカシの精神も限界らしかった。 こんなこと言うのもなんだが、俺は怖い話はわりと好きな方だ。 正直、タカシのいうことが本当だろうが嘘だろうがこういう話を聞いているだけで楽しかったのは事実だ。 「それじゃぁ・・・」 俺は、タカシにある提案をした。 内容は簡単に言うと、お互いの携帯の番号を交換し、 タカシの都合のつく日にテレビ電話でタカシの部屋を俺も確認できるようにして、 再びこのチャットで落ち合うと言うものだった。 タカシを安心させるためと言うのを理由にしたが、 俺自身、タカシの言う事を半信半疑だった事もあり、確認したかったというのが真の目的だった。 タカシは、思いのほかあっさり携帯の番号を教えてくれて、この計画に乗ってくれた。 よほど、指針的に追い詰められているらしかった。 その日は、タカシに次にその計画を実行する日を決めてもらいチャットを終えた。 計画を実行する日が来た。 すでにチャットにタカシもきており、携帯もつながっている。 ヒキコモリのせいか、タカシは携帯の画面に顔を見せる事はなかったが。 (今考えると、テレビ電話じゃなくても良かったな。携帯料金今月大変だ・・・) そんなことを考えつつ、しばらくは普通にしょうもない話をした。 1時間くらい立っただろうか、携帯の画面が一瞬ちらついたかと思うと 「ドドッ・・・・ズリッ」 そんな音が携帯から聞こえた。 「・・・・来た」 携帯からタカシの声が聞こえた。 律儀にもチャットのほうでも同じ書き込みをしてきた。 「ドッ、ズリッ・・・ドッ、ズリッ・・・」 そんな、音が携帯から聞こえてくる。 確かに、何かを引きずるような音だ。 いやっ・・・何かが這い回っている音だ・・・ (俺は、興味本位でとんでもないところに立ち会ってしまったのでは?) そう思いつつ、恐怖が徐々にこみ上げてきた。 タカシは余裕がなくなったのか、チャットに書き込まなくなり、今タカシを確認できるのは携帯の音声のみだった。 「うわっ・・・あぁ、助けて・・・」 そんな声が聞こえてくる。 「ガタッ・・・ガタタタタっ」 そんな音が聞こえた。 さっきまでとは違う音だ。 俺が何の音か模索していると、携帯からすぐ答えが聞こえてきた。 「あっあぁぁぁぁあぁ・・・押入れの・・・天井板をはずしてる・・・」 「えっ?」 不意に俺も声を漏らしていた。 携帯の画面でタカシの腕の後ろの方に押入れは確かに見える。 「ドスッ!」 そんな音がすると同時に、押入れの扉が少し振動した。 「落ちてきた・・・」 タカシの声だ。予想に反してだいぶ落ち着いている。 「ちょっと、見てみる」 予想していなかった言葉が携帯から聞こえてきた。 普段なら煽るところだが、今回はヤバイ。俺は、本気でそう思った。 だが、すでにタカシの後姿が携帯の画面に映り、押入れに手をかけていた。 「ちょっ!?やめっ・・・・!!」 俺が、携帯に向かって叫ぶと同時に、タカシは押入れの戸を勢いよくあけていた。 「あれっ?」 何もいない。少なくとも携帯の画面からは確認できない。 タカシが押入れの戸を閉めた。 その様子だと、タカシも何も確認できなかったらしい。 「何もいなかった」 チャットに書き込んできた。 「天井板もずれてかなった」 だとしたら、さっきまでの音はなんだったと言うのか? 俺は、タカシにそう聞こうと思ったが、ハッとして思いとどまった。 (釣りだったのか?友達か何かと相談して俺をハメたのか?) そう考えると、納得がいく。むしろ、それ以外ありえない。 俺は、チャットに書き込み続けるタカシを見つつ、もう少し話に付き合ってから、 こっちからネタ晴らしをしてやろうと思い、ディスプレイと携帯を覗き込んだ。 「あっ?」 押入れの戸が少し開いている。 おかしい、さっきタカシが閉じたはずだ。 「おいっ、タカ・・・!?」 携帯に向かって話しかけた瞬間、ディスプレイには押入れの戸に”内側から”手が掛けられているところが映し出されていた。 (まさか、ここまで本格的な釣りだとは・・・少し早いが俺からネタバレ振ってみるか) そう思い、携帯を取り 「タカシ!釣りなんだろ?後ろの押入れの友達何とかしろよ!マジで怖い!!」 結構、大き目の声で言ってみた。しかし、タカシからの返答はない。 仕方がないので、チャットのほうで同じことを言ってみることにした。 文を打ち込み、発言ボタンを押す。書き込まれなかった。 「えっ?」 おかしいな、と思いつつふと携帯に目を移す。 押入れはさっきより開いていた。手も見えない。 その瞬間、映像が途切れた。 「あれっ?」 なんだ?タカシが通話を切ったのか?そう思っていると 『えっ?うっ、うわぁぁぁぁぁぁあっ!!止めッ。ゴブッ・・・・・・』 携帯から、タカシの声が聞こえた。 俺は、焦り携帯を手に取り 「おいっ!タカシ!?どうした!おぃっ!!」 返答はない。チャットの方にも、書き込みがない。 「おいっ・・・まさか・・・・」 俺の頭の中に最悪のパターンが浮かんだ。 正確に言えば、”俺の考えうる”最悪のパターンだ。 「次はお前だ」 俺の頭上・・・天井裏から声が聞こえた。





