自殺の名所


ある心霊カメラマンが自殺の名所を撮りに出掛けた。

飛び降り自殺が絶えないという崖に着くと先客がいた。
スーツを着たサラリーマンらしい男が、今にも飛び降りようという位置に立っていたのである。

自殺の瞬間なんて滅多に撮れるものではない、カメラマンはとっさにカメラを構えた。
サラリーマンが足を踏み出した瞬間から連続でシャッターを切った。
カメラマンに気づいていなかったのか、いや気づいてはいたがどうでもよかったのだろう、サラリーマンはそのまま飛び降りてしまった。

後日それを現像してみると、飛び降りる瞬間に写真の中のサラリーマンは振り返ってカメラの方を見ていたのだという。

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