谷川岳の救難無線

119 :turumi ◆zVfPN.zVC. :03/01/13 22:47
大学のワンゲル時代の話1 谷川岳の救難無線

部室で無線機をチェック中に、
「どうしても『SOS』としか聞こえない電波がFMに入るんだけど、どお?」と部員が聞いてきた。
その場に行くと、確かに長点・短点を連続3回クリックする音が聞こえる。
「間違い無いな!」とアンテナを振り、その方向は上越国境、信号強度は高い。
即座に顧問に連絡し車をだしてもらう。
警察には、確信も無いのでとりあえず報告は後にする。

電波の位置を特定する事をFXといい、われわれは車3台で渋川・沼田へ入り方向を確認。
3時間ほどかけてほぼ特定できたのが、谷川岳方向だった天神平。
駐車場へ車をいれると、平日の夕方ということもあり、止まっている車は少なかった。

小型の無線機をポケットにいれて再度方向確認。
もうアンテナが無くても信号強度は強い。
3方向に分けて移動すると、先輩のbさんの無線機が飽和状態で、ハウリングを起こした。
通常こんなことは無いので、一同で驚く。
bさんに続いて登山道を入り、ほんの20m位でザックを発見した。
さらに見回したところ、男性の死体を見つけた。
すぐに自分は取って返して、警察に連絡した。
こんなこともあるのかと一同興奮しながらも、警察がくるのを待った。

その時は誰も気がつかなかったが、もう無線機は音声を出していなかった。
当然、登山者が持っているものと、誰もが疑がわなかった。
でもどうして?死体が電波を出すんだ?
警察も当然その事情を聞き、無線機を探したが、登山者は持っていなかった。

そしてその方は、死後2日はたっているといわれた。
こんな駐車場のすぐ近くで、誰にも見つからずいたのかと思うとふしぎだった。
さらに捜索すると、沢の水の中からそれは出てきた。
もちろん水没して使い物にならない。
ではいったい、誰が電波を出したのだろうか?
もしやと思い、人数を動員して付近を捜索したかが、誰もいなかった。
駐車場に残った車も、なくなった本人のものと確認され、登山カードも他にはなかった。

いったいだれが無線機で俺たちを呼んだのだろうと、
同窓会の度に話題になる、秋の日の思いでです。

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