オオオカタダタカ

347 名前:オオオカ タダタカ 1 投稿日:03/03/03 21:38
あなたはおかしなメールが届いているのに気付いた。
それは、こんな文章で始まっていた。

「突然のメールさぞかし驚かれたことと思います。単刀直入に申し上げますが、やはり私はあなたとはおつきあい出来ません。
いえ、むしろおつきあいしたいくらいなのですが、私とあなたとでは歳が22も離れており、あなたの親御さんがまず反対すると思われます」

全く心当たりがない内容。
間違いメールと判断したが、少し面白く思って読んでみた。
どうやら差出人の男性に、22歳も年下の女性が片思いをしており、
「私もあなたの気持ちには以前から気がついていました」が、
「年齢差はもちろんですが、私は現在無職」で、
「交際するべきではないと結論を出し」たらしい。

本当ならおっさん凄いな、でもおっさんの勘違いだったら間抜けなメールを、それも間違って他人に出しちゃったってことだな・・・
と思ってあなたは送信者の欄を見た。
なぜかあなたのアドレスだった。
首を傾げる。しかし特に気にはならない。そのまま放置した。

次の日。郵便受けにDMが入っていた。
見ると住所は確かにあなたのうち宛だが、宛名が『オオオカ タダタカ』になっている。
あなたの名前ではない。

このアパートに引っ越して半年経つ。
今頃前の住人宛に手紙が届くのもおかしい。
が、きっと前の住人宛だろうと思い込み、2階に住んでいる大家に手渡す。大家は、
「あら、確か前の人は伊藤さんだったはず・・・でも何人も代わってるし、大岡さんて方もいたような・・・
とりあえず、私が郵便局に渡しときますね」と受け取った。
あなたは4階の自分の部屋に戻り、コートを脱ぎながら考えた。
オオオカ タダタカ。漢字で見たらなんとも思わなかったかもしれないが、カタカナだと奇妙な名前だ。

そんなことも忘れた一週間後の夕方。
あなたはアパートに帰って来たが、ふと違和感を感じて玄関に入る前に、4階の自分の部屋の窓を見上げた。
誰かが立っていた。
カーテンを開け放した窓際に、誰かが立って、放心したように遠くを眺めている。
部屋の中が薄暗くてよく見えないが、中年の男のようだ。緑色のコートを着ている。

あなたは凍り付いて、その場で携帯から110番する。
5分ほどで警察が来てくれたが、その頃には男の影は消えていた。
警察2人とあなたは一緒に、アパートのあなたの部屋に入った。
隈なく調べるが、どこにも男はいない。鍵も全てかかっている。
またなにかあれば連絡下さい、と警察は去っていったが、「気のせいでしょ」と言いたげな態度だった。

あなたはすぐに大家の部屋をノックする。大家に、
「前の住人がまだ鍵持ってて、今日勝手に入ったんじゃないんですか」
と怒りながら尋ねるが、大家は戸惑った表情で、
「いえ、鍵はつけかえてますし、そんなはずは・・・・」
と言葉を濁すので、あなたは大家が鍵の付け替えを怠ったのを誤魔化してると思い、憤りながら自分の部屋に戻るとチェーンをかけた。

そして洗面所へ行った時、気付いた。
昨日の夜から使っていない、バスマットとバスタオルがずぶ濡れだった。
あなたは鞄を持って、そのまま部屋を飛び出した。

友達の家に泊まったあなたは、明るいうちにアパートに戻る。
気味が悪いので引っ越したいが、とりあえず引っ越し先を探し、荷物もまとめなくてはいけない。
郵便受を見ると、またDMが入っている。
オオオカ タダタカ宛。
「・・・・・・・・・」
そのDMを持ったまま、部屋に戻る。ざっと中を見回す。クローゼットや押入れ、トイレ、浴室を見てまわる。誰もいない。
DMはフジコーポレーションと印字されている。あなたは開封してみた。

中に入っていたのは、8枚の写真だった。
両手のアップ。両足のアップ。膝のアップ。局部のアップ。腹のアップ。胸のアップ。唇のアップ。目のアップ。
中年の男の体の一部をアップで写したものだった。
あなたはハッとして、メールのチェックをする。
新しいメールが一つ。
たった一行。
「勝手に他人宛の手紙を開けるな」 

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