ペン

779 名前:「帰らないで・・・」その1 投稿日:2001/08/19(日) 09:51
俺は留学生で大学のイベントでインターナショナルな怪談話大会 
というのがあった。
雰囲気だけは盛り上げるんだけど、感覚が違う 
ので、欧米の話は恐くなかったな。ただ、その中で韓国人のした話は 
日本と感覚が近かったのでいけるかも。でもほとんど忘れたのでかなり脚色して紹介してみる。 

主人公は高校3年の女子生徒。 
定期テスト直前だった彼女は、深夜まで自室で勉強をしていた。 
学習机に向かって必死に問題を解いている。 
---瞬間的に集中力が途切れた彼女。持っていたペンを指でいじくる。 
ふと、そのペンを自分の背後に投げてみたい衝動にかられた。 
本当に、なんとなく。特別な意味はなかった。 
そして、机に座ったまま、背後にペンを投げる。 

・・・床に落ちたはずのペンだったが、何の音もしなかった。 

彼女の部屋はフローリング。ペンが落ちれば当然、音がする。 
ぞっとした彼女が、背後を振り向くと、ペンは偶然クッションの上に落ちていた。 
「そんなわけないわよね」一人つぶやき、安堵する彼女。 

翌日、学校で・・・ 
「実はね、深夜の2時頃、背後にペンを投げて、ペンが床に落ちる音が 
しないと、原因不明の理由で死んじゃうって話、聞いたことある? 
・・・実はね、私、昨日その通りに夜中の2時に、背後を振り向かずにペンを投げてみたの・・・」 
その話を聞いていた友達は、ごくりと唾を飲みこんだ。 
「・・・そしたら、ペンの落ちる音がしなかったの!!」 
彼女が大きな声で盛り上げると、友達は悲鳴交じりで、驚きに近い反応を示した。
それを見た彼女は、 
「実際は、クッションの上にペンが落ちただけだったの。ははは」 
このように、休み時間を利用して友達に昨夜の出来事を、多少脚色して笑い話に変えて話したのだった。 

その夜。 
昨日と同様に、深夜までテスト勉強を頑張る彼女。勉強も一段落して 
何となしに机の上の置時計を見ると、2時を5分ほど回っていた。 
2時という時計の針に、友達が自分の話で恐がっていたことを 
思い出させられ、再び右手に握られていたペンを見つめた。 
そして、背後に投げてみた。 

・・・やはり、音はしなかった。 

おかしい。実は彼女は確認していた。 
前日のクッションは、すでにベッドの上に移動させていたのだ。 
思いつく限りで、彼女の背後にペンの音を吸収するようなものはない。 
投げた感覚でペンの落ちる位置は予想できる。そこには何もないのは確かなのである。 
彼女の前身に鳥肌が立った。悪寒が鋭く身体中を走る。 
彼女は、一瞬の迷いの後、ゆっくりと背後を振り返った・・・ 

そこには友人が立っていた。 

「・・・あなたの話の通りにやってみたの」 

冷たく、低い声で、ささやくようにそう言った友達の右手には、しっかりと彼女のペンが握られていた。

前の話へ

次の話へ