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逃げる影

カナ◆cSsNy1w6Kk@特選怖い話:2021/07/29 11:02 ID:4EJeqo66

これは私の祖父が体験した話です。最初に断っておきますが、これは洒落怖と言うほどではありません。むしろ、ありがちな話の一つとして受け取って下さい。
祖父が若い頃、住んでいたド田舎の港町から峠を超えて街まで働きに行っていたそうです。夜遅くまで働いているのが常だったので、基本的に帰るのは真夜中になってしまいます。
当時、その峠は道もろくに整備されておらず車を使うこともできない、別ルートで帰るにしても曲がりくねった断崖絶壁を通らないと帰れない。当時はそんな事情もあってか、街から港まではバスも電車も通っていなかったそうです。勿論、街灯なんてものも整備されていない。
つまり、真夜中にあかり一つない不気味な峠道を歩いて帰ることを余儀なくされたのでした。
そんなある日、祖父は峠を登っている途中に、自分の前を白い影が歩いているを見たそうです。人間の影は白くないので影では無さそうです。
祖父は霊感があるのでその時点でもう、「ああ、これは幽霊か何かだな」と察していたそうなのですがかといって下手に刺激するとよくないことが起きそうですし、道を変えるわけにもいかないのでその影の後ろを注意深く歩いていたそうです。
峠は一本道になっていて、その時祖父が歩いていたのは上りの方でした。
祖父は段々と怖くなってきてとうとう歩調を早めたのですが、すると白い影も早歩きになるのです。祖父は躍起になって走って逃げてしまおうと決心したそうですが、当然の如く白い影も走ります。
何を思ったか、祖父はその白い影の正体を突き止めようとして全速力で走りました。勿論、白い影も全速力でかけていくので追いつくことは絶対に無かったのですが、不意に、その白い影が消えます。祖父は疑問に思って辺りを見回してみましたが、何も居ません。
そこは丁度峠の頂上でした。祖父は狐につままれたようになり、しばらくポカンとしていたそうです。
その後は無事に帰宅し、その後も同じ峠道を使っていたそうですがその影は二度と現れなかったそうです。

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