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Kはよせ...

ゾッとする名無しさん@特選怖い話:2019/08/23 13:12 ID:bD6y5QrQ

私は若い頃、熱狂的なヴィジュアル系ロックバンドのファンをしていました。
特定のバンドが特別好きというよりは、ヴィジュアル系というジャンルそのものが好きでしたので、色々なバンドのCDを買ったりライヴなどに通っていました。
20年以上もCDやDVD、雑誌といったグッズをコレクションしていた為その数は1000や2000を軽く超えていたと思います。

しかしそんな私も30代半ばとなり、だんだんと趣味に時間やお金を費やすことをしなくなり、ついには全く触れなくなってしまいした。

コレクション達が埃を被ってしばらく経った頃、私の転勤が決まったのを期に長年に渡りコレクションしてきた物を処分することにしました。
当初はリサイクルショップに持って行ったりネットオークションに出品したりなどして数を減らしていきましたが、多忙であった事や数が多すぎた事から予定していた期間に全て捌き切る事が出来まず、仕方なくゴミとして処分をすることにしました。
分別が終わり、あとはいよいよ捨てるだけとなった日の晩、怪異は訪れました。

その日は7月も中頃ということもあり、じっとりと暑く中々寝付けずにベッドの中で何度も寝返りを打っていました。
あまりの暑さにふと部屋の温度計に目をやると、なんと30°を示していました。
昼間ならまだしも今は深夜2時を回っています。
しかも冷房を付けているので、こんなに暑いのはおかしいとエアコンの傍へ行きました。

温度設定はいつもと変わらず、通風口からは冷たい風がきちんと出ています。
それなのにどうして?と首を傾げながらリモコンで設定温度を下げると頭上から何やら人の声のようなものが聞こえてくるではありませんか
はて?と疑問に思いながらその声に耳を傾けました。

「Kはよせ... Kはよせ...」

と声はしきりに繰り返しています。
後に気付いたのですが、このKというのは私が好きで聴いていたバンドの1つでした。

男とも女とも取れる、くぐもったボソボソとした声色は次第に怒気を含むように強いものへと変わって、声の主の怒りに呼応するように、部屋の温度が上昇していくのを肌で感じました。
額からダラダラと汗が滴り、床を濡らしていきます。
得体のしれない恐怖と暑さに耐えきれず空調の温度を最低まで下げ、風量も最大まで上げました。
それでも、部屋の中は涼しくなるどころかどんどん暑くなっていくではありませんか

恐怖と猛暑の中、私はエアコンを意識的に見ないようにしていました。
声が明らかにそこから聞こえていたからです。
しかし、声の主は私がそちらに視線を送らないことに益々腹を立てたのか「Kはよせ!...Kはよせ!...」と言葉を発しながらバンバンと激しくエアコンを叩くような音が中でしていました。

最早冷や汗なのかそうでないのかわからない額の汗を腕で拭ったあと意を決してエアコンを覗くと、通風口の真っ暗な中からこちらを見つめる2つの目が私を見下ろしているではありませんか。
白目部分からは血を流して真っ赤に充血し、更にその目はカッと見開かれ、まるでこちらを威嚇しているようでした。
勿論家庭用の一般的なエアコンですから人が隠れる事など不可能です。
私は恐怖のあまり動くことも目を逸らすことも出来ずにいると、そいつはエアコンの中からゆっくりと這い出て来ようと動き出しました。
恐怖で身体が完全に硬直してしまった私はその様子を眺めるしか出来ません。
そうこうしているうちに、そいつは通風口からみにょ〜んと出てきます。
なんと形容したらよいのでしょう、そいつの目は完全に人間のそれですが、身体はゆで卵のように白くぬるっとしていて、とてもこの世の物とは思えない...そうまさに化け物といったらいいのでしょう。
口や鼻といったパーツは無く、ぬめぬめとしたそれは例えるならば、RPGなどに出てくるスライムのようでした。

私はそいつの緩慢な動きに合わせて少しずつ後ずさりながらなんとか逃走を試みようとしていました。
数歩下がった頃に、通風口からある程度出てきたそれは重力に耐えきれずべちょんと真下に落ちました。

人の頭代ほどの大きさのそれは、絶えず「Kはよせ!...」と言葉を発していました。
そして、落ちた衝撃で潰れた身体を整えながらこちらを恨めしそうに見上げています。

そいつは異常な程の熱を放っているのか、私の肌はまるで炙られたかのようにちりちりと焼かれ、恐怖と暑さから私はその場で意識を手放しました。

目が覚めた頃には辺りは既に夕方。
私は激しい吐き気と怠さに襲われ、その日はベッドでそのまま休む事にして、コレクションの処分は後日しようと決めました。
しかし、体調不良は2、3日休んでも全く回復することはなかったので、病院へ行くことに。
そしてそこで軽い熱中症と診断されました。
室内での熱中症自体は珍しい事ではないのでしょうが、それよりショックだったのはあの事件で、真っ黒に日焼けをしてしまった自身の肌でした。
元々、日焼けを気にしてかなり対策をしていた為一般の人よりも肌が白い自信がありましたが、それにも関わらず一晩にして私の肌は小麦色を通り越して最早褐色に近いほど焼けていました。
ショックと体調不良が重なり、私はコレクション達を結局処分することなく、そのまま引越し先まで持って行きました。

引越し作業が終わると、今までの体調不良が嘘のように消え、新しい環境に徐々に順応していきました。

あの不可解な体験も忘れつつあった8月も後半のある日、学生時代からの友人Sから1本の電話が入りました。
Sとは、地元で一番気の合う仲で一緒にライヴや旅行にも行くほどでした。
社会人になってからもずっと交流があった数少ない友人でしたが、そんな彼女とも、自身の趣味を卒業すると共に疎遠になっていたので、彼女からの久しぶりの連絡につい時間を忘れて、昔話に花を咲かせました。

話の流れで、あるバンドの話になりました。
それは彼女がバンド結成当初から追いかけて来たKの話でした。
なんでも、Kは今年の春に解散してなんと先月その元バンドメンバーが亡くなったというのです。

彼女の影響で何度か一緒にKのライヴやイベントに参加していたので、正直私もその事実にショックを禁じ得ませんでした。

程なくして電話を切った私は、あの得体の知れない化け物に襲われた日が、件のバンドメンバーが丁度亡くなった日である事に気付きました。

そしてしきりにあの化け物は「Kはよせ」と私に訴えていました。
あれの意味する事はKのCDなどを処分するなという意味ではないのかと..
しかし、あの白いスライム状の化け物が何故CDを捨てるなと私に訴えかけてきたのかは分かりません。
あの事件から数年が経過した今も、Sとは未だに連絡を取り合っていますし、コレクションも処分出来ずにいます。

毎年、夏になると思い出す私の怖くて不思議な体験の話は以上です。

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