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中国の友人Nの口
深夜のY@特選怖い話:2019/01/14 23:01 ID:DL1VHbhM
久々に夢に出たから投稿。
俺の大学の頃の友人で、中国人のハーフが居た。仮にNとしよう。
Nはかなりの痩せ型なんだが、とてつもない大食い。正直フードファイターの比じゃないくらい食う。
それに変なところもたくさんあった。まず神社や寺、墓に行きたがらない。
更に行ったとしても境内に入ったら一切口を開かない。欠伸すら噛みしめる。
なんでって聞くといつも宗教上の理由だ、とか言ってはぐらかしてくる。
そんなNを面白がって、一度共通の友人と共謀して、地元の神社で口を開かせたことがある。
その日はちょうど神社の縁日で、俺とNの友人(仮にSとする)で無理矢理Nを神社に誘い込んだ。
連れションを口実に神社のはずれにある公衆トイレにNを誘導すると、俺は後ろからNに抱きつき、SはNの横っ腹を思いっきりくすぐった。
どちらかと言えばひ弱なイメージのあるNの暴れっぷりに驚いていると、遂に耐えかねた彼は口を開き笑い出した。(俺はNの後ろにいたから正しくは声を上げたと言うべきか)
ただその笑い声を聞いて俺は思わずNから手を離して尻餅をついた。
ア゛ァ゛ア゛ア゛ッ バァッ バ ァッ バァッ バァッ バァァ
文字では形容し難いが、常人が笑っているのをスローモーションにして、更に声量を数十倍大きくしたような、そんな笑いとも咆哮とも取れる声がNの方から漏れ出たのだ。
我に帰ったNは、口を押さえながら真っ青な顔で俺たちを睨みつけると、全速力で神社から駆け出ていった。
正面からNを見たSはと言うと、心身喪失に近い状態で、口が...口が...と喚きながら失禁していた。
混乱した俺に追い打ちでもかけるように、今度は風もないのに周りの木々が騒めきだした。
パニクりながらもなんとかSを担いで急いで神社を出たが、他の人達はあの声を聞いていなかったようだ。
鳥居を出た瞬間、背後から何かの断末魔が聞こえたが、俺たちは振り返りもせずに家へ逃げ帰った。
Sを家に送り届けて、自販で買ったコーラを飲んで少し落ち着いてから、俺は家に戻った。
他の人は聞こえてないんだし、聞き間違いじゃないのか、などと考えながら居間でボーっとしてると、
「あんたを見守ってたご先祖様が消えてるよ?なんか罰当たりなことでもした?」
とでろんでろんになって帰ってきた姉に言われた。
姉は背後霊が見えるらしく、俺にはだいぶ昔の貴族っぽい背後霊が付いてるって言ってた。
「こりゃ離れたんじゃなくて本当に消えてるねー」
と酒臭い顔を近付けてくるもんだから無視して部屋に戻って、俺はそのまま眠りについた。
その夜はかなり気味の悪い夢を見た。俺は真っ暗な場所にいて、何も見えないし、動けない。ただ俺のすぐ前で、姿の見えない何かがひたすら何か別のものを貪ってる。
バリボリという音しか聞こえないけど、食われてるのが、俺の背後霊だってことだけは何故か分かった。
それから少し経った頃、Nが引っ越したことを知った。Sにすその話をすると、彼はあの夜、自分が見たことをぽつぽつと語り出した。
あの夜、Nが口を開いた途端、その口の中からもう一つの口が見えたと言う。
上下に突き出した犬歯は、まさに神話などで登場する鬼にそっくりだったと、彼は震えながら話した。
その鬼の口からは、救いを求める声や呪詛の声、悲鳴が混じって響いていたいて、聞いているだけで正気を保てなくなったと。
この事件から数年経つが、あの年からその神社で一度も祭り事は開かれていない。
神主さんは、この社に宿った神がいなくなったとしか言わないが、俺には分かる。きっとその神とやらも、Nの中の何かに食われたのだと。