星を眺める女の子 - 島田秀平

窓からは色々な景色が見えますけど、
向かい側の部屋が見えちゃう事ってありますよね。

プライバシーの問題もありますから、本当は見ちゃいけないんですが、
どんな生活をしてるんだろう?と気になって、ついつい見てしまったり…

ある大学生の男の子が、アパートで一人暮らしをしてたんですね。
朝に大学に行って、バイトに行って、夜遅く帰ってくる。
そんな生活の繰り返しだったんですけど、彼には一つ楽しみがあったんです。

自分が住んでいるアパートの向かい側。
向かいの2階に可愛い女の子がいるんです。
黒髪で可憐で、清楚な女の子。

その女の子は、毎晩決まって窓辺で星を見上げているんです。
その星を眺めてる女の子を見るのが、彼の楽しみだったんです。

今日も見てる、次の日も見てる、その次の日も見てる。
そうすると、だんだんとその気持ちが大きくなってきて、
いよいよ、彼は気持ちが抑えられなくなったんです。

(この気持ちを伝えたい!)
そして彼は、気持ちを伝えに行く事にしたんです。

向かいの建物まで行って、チャイムを鳴らす。
ピンポーン…
返答がないんです。

(今さっきも星を眺めていたし、家にいるはずなんだけどな…)
コンコンコンコン…
ノックをしてみたんですが、部屋はシーンと静まり返ったまま。

思い切って彼がドアノブに手をかけてみると、鍵がかかっていないんです。
それで彼はドアを開けて、気持ちを伝えたんですね。

「ずっと好きでした!付き合って下さい。」
それでも、シーンとしているんです。

でも、奥のほうを見ると、彼女はやっぱり窓辺にいるんですよね。
「あの…ずっと好きでした!付き合って下さい。」
やっぱり返事はないんです。

近づいていって、彼はやっとわかったんですね。

その女の子は窓辺で星を眺めていたんじゃなくて、首を吊っていたんです。

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