船越英一郎が体験した怖い話 - 船越英一郎

(船越)
僕は今までそういった経験が全くなかったんですよ。
よくロケなんかに行くとこの業界、そういった霊感が強い方も多いんで、女優さんに多いんですけど
「この部屋には入りたくない」、「ここはどうしても気持ちが悪い」なんていうのを聴いたりするんですけどね。
僕はそういうところは全然感じないんで。
僕は全然そういうのは感じないんで「じゃあ僕がそこで代わりに寝てあげるよ」なんて言ってあげたりしてね。
それでその部屋に入って代わりに泊まったりするんですけど、全く何も起こらないんですよ。
もう快眠で朝起きるとその嫌だって言ってた女優さんから

「あれ、もう嫌な感じが無くなってる」

そう言われることがよくあったんですよ。
それで僕もそういうことがあったんで悪霊も居なくなるくらい自分には強い守護神か何かが居るんじゃないかって思い込みがありまして。
だから自分にはそういった経験が全く無いんだろうなと思っていたんです。
去年までそう思っていたんです。
全く怖いものを見たこともないし、感じたこともない。

去年僕、ミュージカルの劇団をやったんです。
その稽古を東品川のあるセンターでやっていたんです。
それでそこはホールになっているんですね。
密閉されたようなホールで、芝居の稽古を朝から夜の21時くらいまでやって、
21時で終わって僕と舞台監督といつも鍵を締める係の劇団員と三人で最後にそこを出て、電気を消して鍵を施錠して行こうとしたら

パタパタパタパタ

と、足音が聴こえるんですよ。
誰も居るはずがないんですから、三人で同時に後ろを振り返ったんです。
そうしたら白い体操服を着て、下も白い短パンの体操服を着た裸足の男の子がパタパタと走っているんです。
真っ暗なホールの中をですよ。

三人共呆気にとられて随分と長い時間見ていたような気がするんですけど、あまりに驚いていたんで、本当はすごい短い時間だったかもしれません。
そしたらしばらくしたらその男の子が

あはははははは

と笑っていなくなったんです。
今までの僕にはそういうものが見えないという自信は一気に崩れ去りまして。
僕でもこんなことを見ることがあるんだ、と。

それでそのお芝居の本番が来たんです。
僕もその経験があったんで何だかちょっと気持ち悪いなと思っていたんですけど、
舞台があって、その後ろが通り抜けられるようになっていますよね。
大体そこは真っ暗なんですけど、袖のところにモニターが置いてあってね。
僕は演出もやっていたんで、舞台や客席の様子をそのモニターで見たりするんです。
その時も袖に居てモニターを見ていたんです。

その日は一人を除いて皆が舞台に出ていたんで、フッと気配を感じたから、当然僕はソイツだろうと思い
モニターを見ながらソイツと話をしていたんです。
まぁ相手は何も言わなかったんですけど。
「今日あんまり動くよくねぇなぁ」とか。

それで舞台のモニターを見たら、もうだいぶ進行していて、今僕が話をしていたと思っていた奴が舞台の上に居るんですよ。

(あれ、こいつ舞台に出てる・・・。
 じゃあ俺は誰と話していたんだ?)

それでその舞台が終わった後に劇団員の奴に
「おい、俺こういうことがあったんだよ」
と話したら、僕以外の劇団員三人も「実は僕も・・・」というのがあって。
それも皆同じような感じで、劇団員の他の出演者と喋っていたら、向こうから今喋っていたと思っていた奴が来た、とかね。
「でもこんなことを言うと皆に馬鹿にされたり怖がられたりするんで黙っていた」と三人が言うんです。

舞台は暗いから、舞台に居るとお互いがシルエットのように見えるんで、あ、この人なんだなって皆思い込むわけですよね。
あ、今こいつは出番じゃないから、とか。
あいつはさっきあそこに居たから、こっちに来たんだろうな、とか。

(稲川)
舞台ってそういうのありますよね。
皆舞台って位置や出番って決まってますもんね。
今この時間に来る奴ってのは大体こいつだろう、とか。
まして演出をやっていたらなおのことですよね。

(船越)
そうなんです、分かります分かります。

こういうことが去年一昨年と急にあったんで、少し怖いんですよね。
まぁそれっきり今は無いんですけど。
でも僕が今までに経験したっていうのはほんとにそれぐらいなんですよね。

でも自分自身は見たことがないんですけど、割とそういう力のある人と小さい頃から縁があって。
それはみんな仏教の方なんですけど。
僕は必ず一年に一、二回は因縁消滅というものをやってもらっています。
僕は詳しいことは分からないんですけど、その因縁消滅をしている時っていうのは仏前に因縁が出る時と出ない時があるらしいんです。
僕は分からないですから、その人曰く、今日は出たとか、今日は出ないとかを聴くだけなんですが。

それで「今日はこういうのが出たよ」とか教えてくれるんですが、
でもね、そういうのが出る時って必ず体に変調が起こるんですよ。
すごく体調の良い日に行ってもそれをしていると急にすごく眠くなってきたり。
そして鈍痛のような痛みが頭に走るようになって、それは自分ではよく分からないんですがどうにもならないんですよ。
段々と自分の上に石を乗っけられているような気持ちになってきてね。
それで汚い話なんですが、なんでかゲップが止まらなくなるんです。

(稲川)
あ、それはありますね。
頭が痛くなってゲップが止まらなくなる感覚ってありますよね。

(船越)
えぇそうなんですよ、ゲップが止まらなくなって、二、三分止まらなくなる状態になるんです。

(稲川)
でもゲップが出るからいいんですよ。
ゲップが出るというのは簡単に言うと毒を出すようなもんで、それを出さないと溜まっていくんですよね。
だからゲップは出したほうがいいんです。
だからきっとそれは本物が来ていて、自分自身が科学的に言うと毒を濾過して出しているようなものなんですよね。

(船越)
それでね、例えば先日に因縁消滅をしてもらった時には
河原に死に装束を着たお侍さんが何人か居て、きっと彼らの首をはねるであろう執行人がそこに居てね。
そこに神輿のようなわりと派手な装飾をしてある演台があって、そこに犬が居て、その犬がすごく豪華な着物を着ていて
それが見えたって言うんですよ。

(稲川)
そういうことってありますよ。
何年か前に舞台をやった時に、黒子が全部で七人居るんですよね。
三人、三人が人形を操って、それで後一人で七人です。

それでスタッフの一人が
「ねぇ、稲川、黒子は何人居る?」

「七人だよ」

「おかしい、どう考えても八人居る」

「馬鹿言うんじゃないよ」

どうやら人形を皆が操っているその後ろにどうやらもう一人居るらしいんです。
でも皆を怖がらせるとまずいから

「お前それを皆に言うんじゃないよ」

と言って、僕は自分の出番があるから、行ったんですよ。
暗転するうちに位置を変えるんです。
だから私もその場所に行かないといけない。
でもその時にその言われたことが気になったからヒョイッと見たんです。
そうしたら壁と幕の間、下の位置に居るって言われたら、居るような気がするんです。
そしたらそのうちポツンと二つ、穴が開いたように思えたんです。

じゃあ幕か何かに穴が空いて明かりが漏れているんだろうなと思って。
そしたらその光がこっちを見たんですよ。
だから向こうから覗いているその人は、メガネをかけているのかなと思った。
でもよくよく考えてみたらありえないんですよね。
いくらメガネを掛けていようが、そんなに真っ暗なところで反射した光がそこまで来ることはないんですよ。
でも私はその時、居るんだなくらいにしか思わなかったんです。

それできっと舞台監督だろうと思って、袖の方に行くと、舞台監督が居て、私がこれから絡む予定の人形もそこにある。
えっ、じゃあ私が舞台監督だと思っていたそれは一体何だったの? ということなんですけど。
そういうことってやっぱりありますよね。

(船越)
えぇ、えぇ。
やっぱりあるみたいですよね。

(稲川)
それでね、僕ね、二人になることもあるんですよ。
うちのマネージャーもよく見るんですけどね。

(船越)
え、自分が二人ですか?

(稲川)
えぇ。
今の家になってからは私あまり帰ってないし、夫婦仲がまずいからあれなんですけど、
前のマンションに住んでいた時に私が帰る三十分前に、私が帰っているっていうんです。
それで嫁がね、その私に対して「おかえりなさい」って言ってるって言うんです。
それで私が三十分くらいして帰ると、「随分トイレ長かったね」とか言ったりするんです。

「何言ってるんだよ」

「え、だって三十分くらい前に帰ってきてたじゃない」

それでどういうことなのと聞くと、私が帰ってからすることと同じことを三十分前に帰ってきたもう一人の私がしているって言うんです。

私それ、実家でも見ましたよ。
日本間があって、二階に曲がる階段があるんですよ。
実家でそこを通りかかった瞬間にあれっと思った。
階段の何段か上のところに、私が座っているんです。
その時の服装は、普段私が着ていないような服を着ていましたね。
黒っぽいような服を着ていて、普段は着ないですけど、でも確実に私って分かるんです。
それでね、普通だったら驚くはずなんですけど、全然驚かないで、あぁ俺だなって思ったんです。
でも何だか頭がボーっとしているような状態で、

(あぁ、こいつ誰だろう・・・もう一人いるな)

とボーっとしながら通りすぎようとして、あ、もう一度見ようと思って戻るんです。
そうして戻るといなくなっているんです。
そういうことが何回かありましたよ。
そういうことはあるんじゃないかなぁ。

(佐原)
あるって言われましても困りますけど・・・。

(稲川)
あれはありますよね。

(佐原)
船越さん、それ以来は全然無いんですよね?

(船越)
えぇ、そういう体験は無いんですけどね。
この間心霊手術というものを受けてみたんですよ。

(稲川)
どうでした?

(船越)
僕は正直そういうのはあまり信じないほうなんですけど、
知り合いの方からフィリピンからそういう風なヒーリングの凄い方が来るって言うんで
興味があったら紹介してあげると言われて、行ってみたんですよ。

行ったらホテルのバンケットルームみたいなところに無造作に板が敷いてあってね。
そこに寝てくれって言うんです。
それで裸になってパンツ一枚になって私寝転んだんです。
僕は病気とかは無かったんですけど、たまたまその一ヶ月前くらいから下痢が止まらなかったんですよ。
でも僕はそういうのは何も言わないんで寝たんです。

そうしましたら、自分がイメージしていたよりも、何も大きな動きとかはなくて。
ただフッと見て、パキって何か手でやって、そうすると何か鋭利な刃物で切ったように感じて
血がサーッと出るんですよ。

(佐原)
それはご自身で見えるんですよね?

(船越)
えぇ。
助手の方に頭を支えてもらっていたんですけど、見えるんですよ。
サーッと血が流れて、そこに手を入れて、内臓の中で何かが動いているような感覚があるんです。
それで何と言えばいいのか・・・レバーの塊のようなものを出しているんです。
それでその方が手をサッと抜いた途端に、傷も何も無くなっているんです。

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