ひそひそ話 - 八代亜紀
7・8年前の講演のことです。
夜遅く着きまして、泊まったところがすごく老舗だという旅館だったんです。
着いたのが遅かったので、12時半頃にはもう疲れて寝ようと思ったんです。
お付きの人から「もう電気を消しますよ」と言われたので、寝たんです。
そうすると、頭の上の方で女性三人くらいでひそひそ話が聴こえるんです。
「え、そうなの?やだ、うふふふ」と言った声が聴こえるの。
でも気にしないようにしてたんですけど、そのうちに
ガリガリガリ ガリガリガリ
と、爪をひっかくような音がするの。
そうしたら、次に
ベリベリベリ ベリベリベリ
という天井をこじ開けるような音がしてきたの。
私怖くなって、鳥肌が立ってきてしまって、隣に居る付き人さんの方を見たら、
彼女も私と全く同じ方向を見ていたの。
それで二人共同じ方向を黙って見てるの。
(なんだろうこの音は・・・)
二人で辺りを見回していたら
ドン!!
ガリガリガリ!!!
と、天井が剥がれるようなすごい音がしたの。
それで二人共すっかり怖くなって、二人共腰を抜かしながら、必死になって部屋を出たの。
次の日になって旅館の人に怖くて怖くて眠れなかったという話をしたら、
「実は八代さんが泊まった部屋の上の部屋なんですが・・・開かずの間なんです」
開かずの間なのに何であんな音がするのよ・・・と、本当に怖かった経験でした。