元殺し屋を取材 - 村田らむ

私は危ない系の取材をよくするタイプでして、樹海で死体を探してみようだとか、スラム街で生活してみようだとか、ホームレスを取材したりだとか、色々とやばい人を取材するので、自分自身にも包丁を向けられたりするんです。
その中でも一番怖かった人というのは、僕がやっているやんちゃ系の雑誌に刑務所の中で読者でしたという手紙が来て、元殺し屋だって言うんです。
それでインタビューしてくださいと言われて、することになったんです。

いつもは会議室か何かでインタビューをするんですけど、その日はバンが用意されていて、バンの中でインタビューをしてもらいますということだったんです。
待ち合わせの場所で待っていると元殺し屋だという人がやってきて、全然黒ずくめで目がギラギラしているんです。
以前にも人を五人ぐらい殺したことがあるという人と会ったことがあるんですけど、その人と同じように目がギラギラしているんです。
あぁ、この人は本物だなという感じでした。

その人は元暴力団で殺人をしたり、拷問をしたりする担当で、大体ビルの中で人を殺していたという話をバンの中で延々聴かされるんです。
拷問をする相手というのは大きな組の親分だったりが多かったので、気持ちが強くてなかなか心が折れない。
「そういう奴を一発で落とす方法があるんだけどわかる?」と聞かれて、「分からないですね」と答えると、

「手でも足でもいいから肉を削いで、目の前で食ってやると絶対に心が折れるんだよね」

やってみ、みたいなことを言うんですよ。
それでそのバンは樹海に向かっていたので二時間くらいバンの中で聴かされるんです。
なんで樹海に行くのかと聞くと、最後の殺人だけは樹海でやって、それで捕まって十何年刑務所に入ることになったと。
それで編集さんが「村田さん、擬似的に殺されてみましょう」と言うんですよ。

樹海でその人が首を絞めた場所に連れて行かれて、スタッフたちは定点カメラを置いていなくなってしまったんです。
そして背中合わせになって背負投のような形で首を絞めて殺すので、「今からいくよ」みたいなかんじで。
僕も本気ではやらないだろうと思っているんですがちょっと怖くなったりして。

ピタッとロープが首にしまってギュッと締められて、結構強い力なんです。
まぁなんとか殺されずに済んだんですけど、「あなたみたいな人だったら怖いことはないですよね」と聞いたら、

「一個だけすごい怖いものがあって、幽霊が怖い」と言うんです。

という話でした。

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