夏期講習にて - 渡辺徹平
夏だったんですけど、夏休みで受験も近いということで、
昼間に夏期講習というのを学校でやってたんです。
希望者しか参加してないですから、クラス全員ではないんですけど、
まばらに席に座っていて、私は一番後ろに座っていたんです。
ただしばらく経つと、俺の後ろから低く小さな声で、
「徹…徹…」と俺を呼ぶ声がするんです。
え!?と思って振り返るんですけど、一番後ろの席ですから誰もいない。
なんだろう?空耳かな?と思いながらまた授業を受けていたら、
さっきよりもさらに大きな声で、「徹…徹…」って声がするんです。
今度はさすがに俺だけじゃなくて、クラスのやつらが一斉に振り返ったんです。
みんなその声を聞いたんですね。
だけど誰もいない。
なんなんだこの声はと思っていた時に、はたと思い出したんです。
ちょうどその日が中1の時に同級生だったやつが、
お父さんと車で出かけて事故にあった命日だったんです。
そいつの声なんですよ。
その帰りみんなで話し合って、友達と連れ立ってお線香を上げにいきました。
よく考えたらそいつの命日、この番組の放送日の8月7日なんですよね。
本当に偶然なんですけど、この話しをさせてもらって、
改めて冥福を祈りたいです。