師事 - 師匠シリーズ

452 :師事:03/04/29 21:31

僕がド田舎から某中規模都市の大学に入学した時、とりあえず入ったサークルにとんでもない人がいた。 

大学受験期にストレスからか、やたら金縛りにあってて、
色々怖い目にあったことから、オカルトへの興味が高まっていた時期で、
そんな話をしていると、ある先輩が「キミィ。いいよ」と乗ってきてくれた。
その先輩は院生で、仏教美術を専攻している人だった。 

すっかり意気投合してしまい、見学に行ったその日の夜、ドライブに連れて行ってもらった。 
夜食を食べに行こうと言って、えらい遠くのファミレスまで連れていかれた。 
そこは郊外のガストで、なんでここなんですか?って表情をしてたら、
先輩曰く、「ここな、出るよ。俺のお気に入り」。
アワアワ…

ファミレス自体始めての田舎者の僕は、それでさえ緊張してるのに出るってアンタ。 
「俺が合図したら俯けよ。足だけなら見えるはず」 
そんなことを言われて飯が美味いはずがない。 
もさもさ食ってると、急に耳鳴りが・・・
冷や汗が出始めて、手が止まると先輩が、 
「オイ。俯けよ」
慌ててテーブルに目を落した。 
しばらくじっとしてると、ていうか動けないでいると、
視線の右端、テーブルのすぐ脇を、白い足がすーっと通りすぎた。 

いきなり肩を叩かれて我に返った。 
「見たか?」
リングの公開前だったがのちに見ると、高山が街で女の足を見るシーンがこれにそっくりだった。 

僕が頷くと、
「今のが、店員の足が一人分多いっていう、このガストの怪談の出所。 
 俺はまるまる見えるんだけどな。顔は見ない方が幸せだ」 
なんなんだこの人。
「早く食べろ。俺嫌われてるから」 
俺もわりに幽霊は見る方なんだが、こいつはとんでもない人だとこの時自覚した。 

そのあと空港へ向う山道の謎の霧だとか、先輩お気に入りの山寺巡りなどに連れまわされて、朝方ようやく解放された。
以来、俺はその先輩を師匠と仰ぐことになった。 
それは、師匠の謎の失踪まで続く。

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