霊の存在

わたしが子供の頃、東京にもまだ随分自然がありまして、怖いところもあったんですよね。
小さいころよく遊んだ空き地があるんですよね。
今みたいにゲームが有る時代では無かったですからね。

それで暗くなり始めるとあちこちから
「○○ちゃんご飯よ~」とか、「早く帰ってきなさ~い」って声が聴こえてくるんですよね。
その声を合図に、みんな帰っていく。
ふと気づくと自分が一人になっているんですよ。
これが妙に寂しい。

さっきまで周りにみんな人がいましたからね、急に一人になるとこれが怖くなってくるんですよ。
それとね、鬱蒼と木がある大きなお屋敷があるんですよ。
高い塀があってね、その脇に道があるんですが、そこを通るとなんだか怖かったんですね。
誰かがいるようなそんな気がする。

ようするに昔はね、行ってはいけない場所とか、近寄ったら何かがあるんじゃないかという場所が結構あった。
それに昔は防空壕というのがありましてね。
戦争の名残なんですけどね。
学校では先生方が「行ってはいけません」と言うんです。
わたしの母やお婆ちゃんも、「危ないから入っちゃダメよ」と言うんです。
大人は口をそろえて入っちゃいけないと言う。
でも行ってみたくなる。好奇心をそそられる。

防空壕に行ってみると、そこは暗い穴なんですよ。
入ってみようかなーと思うわけですね。
どうやらそこは別の世界に通じる異次元への入り口のような、そんな感じがした。
そこにわたし入っていったことがあるんですよ。
懐中電灯を持ちながらね。

音が全く遮断されますからね、なんだか外の世界とは状況が変わってくるんですよ。
ずーっと回っていきながら、ふっと気づくんですよ。
あれ?と思って後ろを見る。
後ろが真っ暗なんですよね。
怖いんですよ。
何だか分からないけど、誰かが傍にいるような、誰かが見ているような、そんな感じがする。

じゃあ今は何もないかというと、そうではないんですよね。
例えば団地やマンション。
あの夜のエレベーター。
怖いですよね。
誰も乗っていないのに、サーっと上がっていく。
押してもいない階で開いたりするんですよね。
でも誰も入ってこない。
それで同じ階でよく止まって、扉が開くなんてことがあるじゃないですか。
誰かがいるような気がする。

そして今は車の文化ですからね、みんなが車に乗りますよね。
時々本当に誰かが後ろの座席に居るような、そんな気配を感じることってありますよね。
どうやら存在するんですよね、霊というのは。
昔は昔であって、今は今であるんですよね。
どうやら時代が変わって時が移っても、霊というのは存在しているようですねぇ・・・。

前の話へ

次の話へ