天城越えトンネル

大阪のテレビ局で番組をやってましてね、休憩が入ったんですよ。

そうしましたら局のディレクターが私のところに来まして、
「伊豆に天城越えで有名なトンネルがありますよね?実は私あそこで霊体験してるんですよ。」って言うんで、
話を聞かせてもらったんです。


D:何年か前になるんですが、中継をするって言うんで、あのトンネルの上に機材を全部セッティングしたんですよね。
あのトンネル気持ち悪いですよね..古くって。

稲:うん..そうだよねえ。今はもう車通ってないしね。他に道路できちゃったから。

D:そうなんですよね。それで、あの位置がちょうどポイントとしていいんですよ。
あのトンネルの上少し台地がありましてね、そこで機材の調整も済んだんですけど、機材を放っておけないっていうんで
泊まりになったんですよね。
それで一応設置も済んだし、どうしようか?って話してましたら、
私の他に2人いたんですけど、その二人が下の調整をしに行くっていうんで行っちゃったんですよ。

彼は待ってたわけですよね。
あのシーンとした山の中ですよね..そうでなくても、あのトンネルはなんだか不気味ですよね?
うっすら暗くて、石のトンネルですから..たまに風が音をたてて流れていく。
これが、下に行った人間がなかなか戻ってこない。
(早く来てくれないかなあ..どうも気持ち悪いなあ..)って彼は思いながら待ってたんですよね。
で、仕方ないからテントの中で寝転んでたっていうんですね。

辺りは真っ暗ですよ..鬱蒼とした所ですから。
そうしましたら、下の方から声がだんだんだんだん近づいてきたっていうんですよ。
(あぁ..下のスタッフが帰ってきた)って思った。

足音が近づいてきた。ちょうどトンネルの横から登る道があるっていうんですよね。
そこを上がってくる足音がする。(ああ、、みんな来る来る)って思ってた。

はてな....?声がするんですが、その声がざわめきのように聞こえたっていうんですよね。
おかしいな?二人じゃないなあ..誰かを連れてきたのかなあ?って思ってた。

でも、近づいてくると、それはどうやら何人もの足音だったって言うんですよね。

ザッザッザッザッザッザッザッ....

(え?おい..一体何人来るんだ?)

こんな多いわけないじゃないか..おかしいなあ..って思ったらなんだか気持ち悪くなってきちゃった。
でも自分は行き場所はないですから、テントの中で黙って縮こまってた。
と、音は余計に大きく聞こえてくる。

ザッザッザッザッザッザッザッ....ザッザッザッザッザッザッザッ....ザッザッザッザッザッザッザッ....
居る。かなりの人数の足音。

それが自分のほうにだんだん近づいてくるもんだから、
(うああ..たまんねえなあ..)って固まってた。

テントの所まで来たら足音が止まったの。
足音が止まって、そしてテントの入り口の布がふわっとどけられたの。

見るともないんだけど、彼は布が開けられた入り口を見ちゃったの。
すると、そこにたくさんの顔があって彼をジーッと見てるっていうんですよね。


D:(うあああ....)って思ってそこで気を失っちゃったんですけど、
稲川さん、その大勢の顔、それ日本人じゃないんですよね...

やがて下に行ってたスタッフが戻ってきて、そこで寝たんですけどね、
後日彼が会社にいましたら上司が来て、「おい!どうだった?あの中継?」って聞いてきたそうですよ。

D:「ええ...なんとかうまく中継出来ましたよ。」
上司:「おまえ、上に一人でいたんだって?おまえ見たんだってなあ..」

D:「え?なんで知ってるんですか?」
上司:「ああ、話で聞いたんだけど、実はなあ、俺も若い頃あそこで中継した事があるんだけど、見てるんだよ・・」

って上司が言ったっていうんですよね。

D:稲川さん、なんでもあそこには昔毒物関係の研究所があったそうですね?
それで、そこで働いていたっていた人は、ほとんど日本人じゃなかったそうですね..
そこで働いていた日本人の方も5~6人亡くなっているそうですね..

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