警察の意図
静岡の近くだと思っていただければいいんですけど、
自分の実家がそっちにある夫婦が、子供を連れて実家の方に遊びに帰ったわけです。
旦那にしてみれば自分のふるさとだし、慣れている場所だから、それに奥さんもそこをよく知っているわけだ。
お爺ちゃんお祖母ちゃんも居るし、気楽にいたわけですね。
それで子供は海もあるし楽しいですから、あっち行ったりこっち行ったりして遊んでいた。
親も
「時間になったら戻ってくるんだよ。
あんまり遠くに行ったら駄目だよ。
危ないところには行くなよ」
くらいに言って子供を遊ばせていた。
それでしばらく時間が経ってもうそろそろ子供のことを呼ぼうかなと思ったんだけど、呼んでも子供は帰ってこない。
海の方をあちこち見るんだけども、いないんです。
何処行ったんだろうと初めは言っていたんですが、段々と皆不安になってきた。
時間も随分経っているということで、近所を探し始めたんです。
でもあちこちを探してみるんだけど、子供の姿は何処にもない。
元々土地の子だったら何処かに行くということもあるんでしょうが、他所から遊びに来ているだけですからね。
そう遠くに行く場所なんてないんだけども、何処を探してもいないんですよ。
それで段々と時間も経って日も暮れてきた。
そうしましたら土地の漁師の人が「海をさらってみるか」と言い出したんですね。
海をさらってみるというのは、早い話、もう死んでいるということです。
海で溺れているから、死体をすくってみようということなんですよ。
普通はなかなか言えないですよ、そんなことは。
あんたの子供が亡くなっているから、海をすくってみようということですからね。
そんなこと簡単には言えない。
でも漁師の人は最悪の事を考えてそう言ったんでしょうね。
そうしましたらお父さんの方ももしやということがあるから、お願いすることにした。
嫌だけども、もしやということがあるかもしれないから。
ただ海と言ったって広いですからね。
そうしましたら、地元の年をとったベテランの漁師さんが
「もしかすると、ここには潮が満ちていると表には出てこないけども、
潮が引くと出てくる洞窟がある。
そこにはよくものが流れこむんだよ」
と言った。
潮の加減でよく死体が流れ着く場所なんですよね。
「そこをさらってみないか」と言う。
嫌なことなんだけども、なんせこういった状況ですからね。
周りの人も、じゃあ探ってみようかということになった。
潮の引いた時期を見計らって探しに行こうということになったんですね。
それで捜索する人たちが潮が引いたタイミングで入っていったんです。
この洞窟の写真というのは、ある雑誌で一度紹介されたことがあるんですよ。
それはその事件が起こる前の話なんですが、すごい写真なんですよね。
普通は海の水というのは段々と、徐々に水が入ってくると思うじゃないですか。
でも小さな洞窟に向かって水が集まって入るものだから、実際はすごい勢いがあるんですよね。
それでそういう風に海の底に、普段は見えない形であるところですから、あちこちに抉れた穴なんかがあって
そこに勢い良く水が入ると、あちこちから水が吹き出したりするんですよ。
我々もその写真を見た時は驚いたなぁ。
一気にすごい勢いで水が入ると大きな石なんかも持ち上げられて、その洞窟のあたりでかき混ぜるような形で盛り上がってぶつかったりするんですよ。
そして岩同士がぶつかってお互いのことを砕いてしまうんだなぁ。
それで波が引いた後の写真もあるんだけども、辺りには小さな石の欠片がコロコロと転がっている。
その中に変なものが写り込んでいるんです。
人間の大腿部の骨なんですよね。
それで、トンネルの壁があるでしょ。
そこにすごい勢いで水が入るから砕かれた石なんかがその壁にハマってしまっているんですよ。
その壁にも岩に混じって頭蓋骨がハマっていたりするんです。
死体って何年も見つからない場合ってあるでしょ。
そういうのがそこに流れ着いて石と一緒に砕かれて、そこにハマってしまったりしているわけですよ。
すごい光景ですよね。
砕かれた石の間に骨が転がっているんですから。
この写真は本当に気持ちが悪かったなぁ。
そしてもう一枚写真があったんですけど、この写真はもしかしたらこういうのが好きな人だと見たことあるかもしれないなぁ。
洞窟の奥のほうなんだけども、岩が2つあるんです。
その間に女の人のお尻がハマっている。
これは変にリアルで気持ちが悪かったなぁ。
ようするに、何処からか飛び込んだのか、溺れたのか分からないけどもここに流れ着いたわけだ。
それで波の中で岩や何かとぶつかって服から細かな骨から全部砕かれちゃうんです。
そして残ったのはお尻の部分だけ。
そしてそれが岩の間にハマっちゃったわけだ。
でも不思議とそのお尻というのは綺麗なんだよね。
若い人のお尻でもって、服はズタズタになって亡くなっているけどもお尻はやっぱり肉が厚くて柔らかいんでしょうね。
岩の間に挟まってこちらを向いている。
これは本当に気持ちが悪い洞窟ですよ。
それで結局その坊やがどこで見つかったかというと、その洞窟の奥の奥、一番奥に平たい石があるんです。
その石の上に仰向けに倒れていたって言うんです。
それで見つかったというんです。
幸いにも体にはさほど傷が付いていなかったそうです。
でもこれはもしかすると外で殺されて、投げ込まれた場合もあるから、警察が確認に来るわけですよ。
変死や鑑識の人が来るわけです。
それで検死解剖がされたんです。
解剖が済んで結論が出たんで、親が引き取りに来た。
そうしたら鑑識の警察の人が、刑事さんなんですが写真を持ってきて
「お父さん、ご覧になりますか」
と聞くんです。
普通は見せないですよね、自分の息子が死んだところなんて。
それなのに警察の人は「息子さんが亡くなられた現場を見ますか」と言ったそうなんです。
そうして父親が見せてもらった写真というのは、子供が仰向けに倒れているでしょ。
それを上や下の角度から撮っているものなんです。
次の写真を見せられると、やっぱり息子が亡くなっている写真なんです。
お父さんにしてみたらそんな生きている時の写真じゃないものは、嬉しくもなんともないですからね。
お父さんにしたらそんな写真は見たくないわけですよ。
でも警察にはある意図があったんですね。
「お父さん、これはどうですか」
と、警察の方が一枚の写真を見せた。
それは坊やが仰向けに寝ていて、腹のところにもやっと白いものが写っているんです。
それを見てお父さんも何か感じ取るものがあって、「この白いものはなんですか」と聞いた。
すると警察は、
「私達が行って、写真を撮った時にはこんなものは無かったんです。
でも写真で見るとこれが残っていたんです。
お父さん、これはどうですか」
そう言ってお父さんに次の写真を見せたんです。
そうすると坊やのお腹のあたりに写っていた白いものが形になっていたそうです。
左肩があって、頭があって、右肩があって、お父さんは「これは何ですか」と聞いた。
「私達にも分かりません。
私達が行った時にはこんなもの無かったんですよ。
お父さん、実はこの写真なんですけども、心当たりがあるんですが・・・」
「なんですか?」
出された写真というのは坊やが仰向けに倒れていますよね。
その坊やのお腹のところに白い頭をした婆さんが腹のところに乗って、
坊やの体に乗っかって首を絞めながらカメラを睨んでいる写真だったというんですよ。