ひいじいちゃん

987 :本当にあった怖い名無し[sage] :2008/07/29(火) 23:51:25 ID:6H5bzBq20
高校3年の夏休み。すでに進路が決まっていた。 
ちょうど父が長期出張中ということもあり、 
なんだかんだでほぼ毎日、夜中に遊びに出かけていた。 
遊ぶといっても友達が集まってだらだらするだけだが、 
母はもちろん心配していた。家では小言三昧。
ある日、晩飯時に年上の友達から電話がきた(携帯が普及してない時代)。 
友達は「バイト終わったら数名でカラオケ行くからおまえも来いよ」と。 
電話を切ると母が「あんた、今日もまた夜出かけるの? 
こっちは心配して寝れないことだってあるんだから!」と。 
母は時折ヒステリックになる人なので、俺は、 
「あー、ヒステリー嫌だ嫌だ」みたいな感じで無視。自室へこもった。

24時。母の部屋の電気が消えているのを確認して、こっそり玄関へ向かった。 
うちは古い家で、当時の玄関は木に硝子がはめ込まれているだけなんだけど、 
暗い中でサンダルを探していたら、玄関の向こうに誰かがいるのが見えた。 
「え?こんな時間に誰?」と思ってよく見ると、背の低い老人男性だった。 
「まさか近所のボケたじいさんでも夜中に徘徊してるのか?」と思ったが、 
俺が外へ出て対応すると、母が起きてくるだろうと考えたので、 
とりあえず玄関に腰を降ろしてちょっと様子を見てみることにした。

座りながらサンダルへ手を伸ばした時、ちょっとだけ目を離した。 
次の瞬間、老人男性はいなくなっていた。ものの2.3秒で。 
「ん?こええなー。徘徊老人だろあれ」と思いながらサンダルを履いた。 
そこから立ち上がろうとしたら、目の前にその老人が立っていた。 
なんともいえない表情で俺のことをじっと見ている。 
怖い感じではなく、どちらかというと油すましみたいな。 
そこで俺は「ひゃっ!」みたいな感じでスッ転んでしまった。 
もしかしたら声すら出ていなかったかもしれない。 
転んでからまた老人を見たら、もうそこにはいなかった。 
俺は玄関から、もちろん脱兎のごとく逃げ出した。 
結局朝まで部屋から出ることはなかった。いつの間にか寝ていた。
朝、母が俺の部屋を換気しようといきなり入ってきて目が覚めた。 
「あれ!あんたいたの?夜遊びは中止にでもなったの?」と。 
それで「やべえ、電話してねえや俺」と気がつき、 
1人暮らしの友達宅へ電話をした。何回かかけたが出る事はなかった。

その日は1人で玄関を通る気にはなれず、しかも家に1人ってのも 
嫌だったので、ひさしぶりに母と買い物へ出かけることにした。 
母は「いつも荷物持ちしてくれたらラクだわ~」とか言ってたが 
俺の頭の中は「あのじいさんは何?」でいっぱいだった。

買い物から戻った頃、電話が一本かかってきた。友達の、そのまた友達から。 
一度だけ面識があったので、何の用だろうかと。 
すると、昨夜約束していた友達は朝方、繁華街でチンピラみたいなのに 
絡まれて喧嘩になってしまい、結局病院送りにされてしまったとか。 
それを聞いて、「あのじいさんのおかげで助かったのか俺?」と。 
友達は1週間弱で退院したんだが、なんとなくそれきり疎遠になった。 
俺は夜中に出かけるのを自重するようにした。いろいろと怖い。

それからちょっとしてお盆時期になった。 
暇をもてあましているので母の実家へ行くことにした。 
小5から高3の夏休み直前まで部活で忙しかったので、 
母の実家へ行くことは7年ぶりくらいだった。
すごい田舎の母の実家へ到着して、懐かしくて家の中を回った。 
田舎だから座敷が広い。3つ連なりなんだけど、そのうちの1つに仏壇がある。 
そこの部屋のふすまの上には、親族の写真が額縁で飾ってあった。 
「あー懐かしいなこれ。見た記憶あるわ」と思いながら眺めていたら、 
その中に、あの老人男性がいた。鳥肌がたった。

母を急いで呼んできて、「ちょっと!この人は誰?」と聞くと、 
「私のおじいちゃんだよ。あんたのひいおじいちゃん。 
私おじいちゃん大好きだったのよ~」と。

一瞬で嫌な汗がぶわーっと出たんだけど、それでわかった。 
ああ、ひいじいちゃんは俺を守ってくれたんだ、と。 
その夜、玄関での出来事を母に話したら、母は、 
「あんたを守ったんじゃなくて、私を大事に思ってるのよ。 
あんたが私の言うこと聞かないから怒りに出てきたのよ~」と。 
まあどちらでもいいんだけど、以後はなるべく母の実家へ 
ちょくちょく行って、写真に挨拶するようにしています。

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