『きづいたコト』

ソウさん  2008/08/21 06:11「怖い話投稿:ホラーテラー」
昔よく遊んだ友人から連絡があり、俺のアパートを訪ねてくれることになった。

俺が東京に引っ越してきたばかりの時は、手紙のやりとりはしばらくあったが、いつしか連絡はとらなくなっていた。

20年ぶりの再会だ。


約束した時間より遅れて、夜おそく彼はやってきた。

ドン、ドン、ドン!


ドアを開けると、なんとなく昔の面影のある彼が立っている。


すぐに異変に気付いた。


顔面蒼白で全身汗で濡れている。


久々の再会に浸っている場合ではないようだ。


「何か、あった?」
彼を部屋に入れ、タオルを渡した。


『今から、ワシが話すことよーぐ、聞いてけれ…。』



方言と訛(なま)りがあってわかりずらいと思うので、変わりに説明する。


せっかく東京に来たのだからと、ついでに彼は東京見物をしてきたそうだ。

東京タワーを見た後、近くの公園の散歩してたついでにトイレに入った。


しばらくして、何か気配を感じた。


ふと上を見ると隣の個室から女が顔だけ覗かせている。

びっくりした彼は、トイレから逃げ出した。



しばらく走って、墓地を過ぎた頃、今度は足にずっしりと重みを感じた。


間違いない、足首をつかまれている。


あまりの痛さに足元を見ると、さっきの女が苦悶の表情を浮かべ、見上げていた。


究極の恐怖を味わうと声が出ないらしい。


しばらくして、女は消えるようにいなくなり、友人は無言のまま全速力で走った。


こうしてようやく、俺のアパートに着いたそうだ。



友人は最後にこう、付け加えた。



『本当怖いべなぁ………、都会のおなごは。』






「じゃなくて、霊なんだけど。」
俺は言いたかったが、あえて言わなかった。





それより、もっと気になることがあったからだ。






友人が部屋に入ったときから、俺は部屋の空気に違和感を感じていた。






「さっきから、ずっと気になってたんだけどな……」
俺は恐る恐る友人に尋ねた。











「便所でケツ拭いた?」

友人はさらに青くなった。

前の話へ

次の話へ