逢魔が刻


359 :1[sage] :2007/02/14(水) 12:27:04 ID:LAVdjPg50
何年か前の話 
その日は友人と京都の嵐山まで自転車で遊びに行っていた 
家から自転車で3~40分もあれば到着した様に思う 
途中から延々とまっすぐ進むだけの道で、迷う事はない筈 
河沿いに緩くカーブしながら続く道で、河原側には高い建物もなく 
遠くからでも嵐山名物の赤い橋を見る事が出来た

夕方、日が暮れて来たので帰ろう、と言う話になり 
元来た道を自転車で走っていた 
会話をしながら夕暮れの道を走り、道の中程まで来た 
ここまでは順調だったと思う 
来た時よりも時間がかかった気がして 
「疲れたからペースが遅くなってるんかなぁ」と言うと 
友人も「そやなぁ」と同意した。あまり恐怖心はなかった 
後ろを振り返ると、さっきまで居た赤い橋がおぼろながらに見えるし 
車道には少ないながらも車の通りがあったから

「こんな時間の事を逢魔が刻って言うんやろ」と友人が言った 
「三つ辻でお化けに逢うんやっけ」「十字路ちゃうん?」 
そんな話をしながら自転車を漕いでいた 
そこから急に先に進んでいると言う感覚が無くなった 
無くなった、と言うか、前に進んでいない様な気がした

「なぁ、なんか・・・変やない?」「何が?」「んー何がって言うか、何となく」 
「逢魔が刻やもん」「怖い事言わんでや。全然進んでへん気、せーへん?」

後ろを振り返ると、夕暮れの中で赤い橋がなんとか確認出来た 
前方には道の終わりを表す信号がぼんやり見えている 
(道の終わりには大きな交差点があって、左折すると車通りの多い大通りに出る) 
「気のせい気のせい、疲れてるだけや」そんな会話をした
その時、なんとなく携帯の時計を見た 
何時だったかは忘れたけれど、出発してから20分くらいたっていた様に思う 
時計で見る限り、順調に進んでいる感じだった 
その後、怪談話をしながら自転車を漕いだ

が、やっぱりなかなか大通りに繋がる道に到着出来ない 
「やっぱ変やなあ。車も全然通らへんやん」と言うと 
友人も「ほんまやなあ。この時間なら車通りもある筈やのにな」と言った 
その後も自転車を漕ぎ続けたが、さすがに疲れて来た

「自分、煙草持ってる?」「うん、一服するか?」 
道の横に自転車を止めて、友人が差し出す煙草を受け取った 
煙草に火を点ける前に携帯をみると、さっきから殆ど時間が経っていなかった 
「みてみ、おかしいわ。時計壊れたんかな」と友人に言うと 
「自分auやろ?電波時計ちゃうん。携帯おかしなったん?」と友人もいぶかしげだった

ふと父の話を思い出し「なぁ、これってなんかに化かされてるんちゃうかな?」 
と父の話を簡単に話すと、怖がりの友人は 
「うわぁ嫌や!早く煙草吸って帰ろう!」と言った

煙草を吸い終えると、逃げる様に自転車に跨がった 
するとあっさり、いとも簡単に大通りへの道へ出る事が出来た 
そのまま急いで自分の家まで突っ走った
おかしいのは、煙草を吸った後 
それまで夕日で真っ赤だった空が真っ暗になった事 
友人の顔まで真っ赤に染まる程の夕日だったのに 
あっという間にあたりが暗くなったを覚えてる 
これは「日が落ちるのは早いねえ」で済ませられるかも知れない 
もう一つは家に帰って時計を見ると、1時間半以上経過していた事 
大通りに出た時点で時間を確認すれば良かったけれど、それはしなかった 
でも大通りから自宅までは、15分もあれば余裕でつく筈

自分たちは約1時間もの間、どこを彷徨っていたんだろう? 
煙草を吸わなかったら、まだあの道を走っていたのだろうか?

そんな事を、時々思ったりする

長文で申し訳ない 
自分の体験は以上です

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