アパートの隣室

155 :本当にあった怖い名無し[sage] :2006/05/21(日) 18:27:46 ID:kZS9DiOm0
もう、20年以上昔の話で申し訳ない。 
場所は仙台市の今で言う青葉区になる。 
高校を卒業し専門学校に通う為に家賃¥12.000の安アパートを借りた。
 
6畳一間で風呂無し共同トイレの薄汚い○○荘という名の2階建アパート。 
玄関を開けると共同の下駄箱があり大家さんが監視してる様なアパートだ。
 
個室の下宿みたいな感じ。 
よく覚えてないが全部で10部屋位有ったと思う。 
俺の部屋は2階の一番奥で突き当たりトイレの脇だった。
 
近くに彼女のアパートが有ったので何でも良かった。 
だから風呂無しでも安いこのアパートを借りた。 
そんな訳でここには週に3日位しか居なかった。 

住み始めて半年が過ぎとても寒くなって来た頃である。 
隣の部屋から夜中の1時位に成ると「チィ~ン」と聞こえる。 
数珠を摺り合わせる様な音も聞こえるから隣の住人が仏壇でも拝んでるんだろうと初めは思った。 

でも何でこんな夜中に? 
普通は朝とかに拝むんじゃないのかなぁーと感じたが別に気にはしなかった。 
ところがその日からアパートで寝る度に同じ時間帯に同じ様な音が聞こえる。 

彼女や友達も聞いてるから幻聴とかではなく確かに聞こえた。 
壁にコップをあてて不定期なリズムの数珠の音も皆で確認し気味悪がった。 

大きな音ではなく耳を澄まさなければ聞こえない程の音・・・ 
彼女に隣にはどんな人が住んでるの?と聞かれたが会った事がなかった。 
ほぼ夜の時間帯しかそこに居ないのでどんな人達が住んでるか判らないが 
トイレを利用する人が居るので2階にも人が住んで居るのは確かだった。

年末になり正月を実家で迎える為、大家さんに家賃を払いに行った。 
大家さんはメガネを掛けたおばあちゃんである。 
今、餅を焼いてるから食べてけ!と言われ部屋にお邪魔した。 
大家さんに隣の住人はどんな人ですかと聞いてみた。 

大家さんはキョトンとして隣は空きだよ、と言う。 
年寄りの言う事だから大家さんの勘違いだと思ったが 
それがどうしたんだい?と聞くので夜中に聞こえる音の話をした。 
大家さんの顔色が曇り小さな声で「亡くなったかぁ」と言った。 

大家さんの話ではその部屋に訳ありの老夫婦が住んでいたらしい。 
訳ありと言うのは籍が入ってない別苗字の二人だった。 
二人とも60代の人で男性の方が病気で前年の12月に亡くなったのだ。 
勿論、病院で亡くなったのだが葬式をした様子はなく骨壷を抱えて 
相手方の女性が帰って来たらしい。 

それからその女性は真夜中になると位牌に向って拝む様になったのだが 
当時の住人から苦情が出て大家さんはその女性に何度も止める様に頼んだそうだ。 
見る影も無く痩せ細った女性が心配で大家さんはおにぎりをあげたりとかしていたが 
大晦日に女性は突然「お世話に成りました、お父さんが呼んでるんですよ」 
と言ってアパートを出て行ったそうだ。 
大家さんは心配で新聞とかニュースとか1年間ずーっと気にしてる状態だった。 
行く処が無くて戻って来てるんだね、きっと。なんて言ってる・・・ 
あんたが居ない間にあの部屋はお払いしとくからねと大家さん。 
年が明けアパートで夜中を迎えてももうあの音は二度としなかった。
もうこのアパートは取り壊しに成り今流行のウィ○リーマンションになった。

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