「立ち入り禁止」

365 :みんく:2009/07/23(木) 00:51:06 ID:.IUn9mfo0
少し前の話です。
私の家は、もともと山を切り崩した土地の住宅街で
一戸建ての家々が建ち並ぶ中にありますが、すこし団地を外れると
途端に人気のない田んぼや、砂利道が現れるような場所にあります。

いつものように仕事を終え、電車を乗り継ぎ
最後の電車である田舎道をゆく○○電鉄に乗りました。
休日出勤で、終電間際の時間帯ということもあり人はほとんどおらず
電車の心地よい揺れに、ついうとうとしてはっと気がつくと
降りるはず駅を通り越して、終点の一つ手前の駅に着いてしまっており、
仕方なくいったん、その駅で降りました。

私以外に二人、スーツ姿の女性が一緒に降りて改札に向かいました。
真夜中で人気のない無人駅なので、ほかに降りる人を見てなぜかほっとしました。
ひとりの女性は駅のロータリーにすでに迎えの車が来ていた様子で
もう一人の女性は、歩きながら携帯で何やら話し込んでいました。

すぐに前の駅に引き返そうかとも考えたのですが
この駅からでも団地と団地の間にある
山道を抜ければ、少し距離はありますが家には辿り着けるので
その抜け道に向かいました。

その抜け道は以前にも何度か使っており、一応フェンスがあるのですが
人が通れるほどに切り裂かれ、電灯がない空地に囲まれた坂道を
ほんの2分ほど歩けばすぐに目の前に民家が現れます。
夜は暗くて少し怖いですが、歩きなれた道なので気にせずに向かいました。

団地を抜けて、フェンスが目に入ったとき
いつもと違う感じがありました。
近づいてみると、以前穴のあったフェンス部分に
工事現場に置かれるような黄色い「立ち入り禁止」の柵が貼り付けられていたのです。
高さは私の背ぐらいですので、その気になればよじ登れる気がしたので
しばらくどうしようか、立ち止まって考えていました。

その時、柵の向こうで何かカラカラというような金属音が聞こえたのです。
風に柵が揺れたのかな?とおもい目を凝らすと
何とも言えない、妙な悪寒が背中に走りました。
疲れているし、足場も悪いし今日はやめておこうと思い、終電に乗り遅れないように
小走りに駅に引き返しました。

駅に引き返す途中、向こうからひょっと人影が現れました。
びっくりして見つめると、先ほど同じ駅で降りた女性でした。
そのまま小走りですれ違いながら、ひょっとしてあの人も抜け道を・・
と思いましたが、特に気にせず駅に向かい無事電車に辿り着き、家路につきました。

次の日は休みだったのでぐっすりと眠っていたのですが
朝、母が大きな声で部屋に飛び込んできたのです。
「ちょっと、あんた!ニュースみてニュース」
と言いながら、寝ぼけている私の手を取り、リビングのテレビの前につれてきました。
何事かと思ってテレビを見ると、見慣れた風景にリポーターが立ち
何かを説明していました。

少しずつ理解しました。
私はぞっとしました。
そうです。
昨日のあの抜け道で今朝若い女性の惨殺死体が見つかったのです。
おののような刃物で首を切りとられていたそうです。
あまりの恐怖に私はその場に座り込んで泣き出してしまいました。
その女性が、あの時すれ違った女性かどうかは、わかりません。
それ以上そのニュースを見れなかったし、母も深くは話しませんでした。

しかし、今でもあの抜け道には近寄れません。
もしあの時、私が柵を乗り越えてあの坂道を下って行っていたらと思うと。
あの時の金属音が何だったのかと考えると。
恐ろしくて眠れない日があります。

あの黄色い「立ち入り禁止」の看板の後ろに・・・「何が」いたのかと思うと。

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