お盆

30 :奈々氏:2008/07/12(土) 16:04:10 ID:???0
個人的には怖くないけど。人に言うと怖がられたので。

私の地元は、お盆が近づくと墓掃除からお迎えまできちんとしている地域だった。
今はやらないらしいが、迎え火を炊く日の夕方にお墓までご先祖を迎えに行き、墓前で提灯を灯して、
ご先祖さんたちを家まで連れて帰る風習がある。
迎え火もあるんだけど、迎え火+墓前まで行くのが正しいようだった。

子供の頃は遅くまで外にでることもないから、ある意味子供には一大イベント。
ワクワクしながら暗くなった山の墓地まで「お迎え」に行く。
皆どの墓も同じように迎えに来ていて人手もあるから、真っ暗な墓地でも怖くはなかった。

ただ、墓から家までの道のりで肩が重くなったり、
自分たちの周囲に何か違う気配がたくさんあるのは感じた。
東京のイトコたちは重さを怖がってたけど、アレは多分ご先祖様たち。

当時には珍しくペット用の墓も祖母があつらえていたから、墓前から帰る時はたまに獣臭も感じてた。
仏壇のある祖母宅に着くと、重さも獣臭も消えた。

父方の祖父宅では墓前まで迎えに行く習慣はなかったけど、代わりに「盆踊り」を寺社で開いてた。
墓地へ続く真っ暗な山道に誰もいないのに、人の気配をたくさん感じてた。
当時まだ「土葬」もあって、早朝の墓地でうっかりやわらかい土を踏んでしまい、祖母に叱られた思い出がある。
ずぶずぶと沈むようなやわらかい土の感触は30年以上経っても忘れられない。 

30に追記:墓掃除の時に隣接した墓に供物をおすそ分けする事もあったけど
「お迎え」の日には、他所の墓前で提灯に火を灯してはいけなかった。

そう言ってた祖母が、年を取って何を思ったのか・・・
無縁仏を数人分、先祖の墓に入れてしまって、その位牌を仏壇に一緒に
置いた事がある。親族が誰も知らないうちの出来事だった。

あるお盆の時に伯母とイトコ4人と私・弟で祖母の2階に泊まった。
祖母の家の前には街灯があり、すりガラスだったとはいえカーテンのない2階は夜中でも明るい。
私や弟は暗くないと寝付けないのだが、その日は疲れて皆寝てしまっていた。

夜中に誰かが階段を上がってくる気配がした。

私は弟が夜中にトイレに起きたのかと思いながら目を閉じていた。
ふと、顔を何かで照らされたような気がした。
目を開けると街灯の明かりだけが見えたので、気のせいだと思って目を閉じた。
畳の上を歩く音がして、布団の周りを誰かが動き回っている気配がする。
目を開けても、開けた先には眠っているイトコたちや伯母しか見えない。
ヨコを向いて寝ていたので、背後の弟は見えない。でも弟の寝息は聞こえた。
誰かの気配は足元にあるようだが、とても眠くて頭を動かす気にもなれなかった。

祖母が様子でも見に来たのか、珍しいなあとそのまま眠ってしまった。

朝、私はすっかり忘れていたのだがイトコの1人が祖母に文句を言った。
「ばあちゃん昨日寝ている時、懐中電灯で俺を照らしたでしょう!まぶしかったよ」
「俺もー」と弟。
ところが祖母はそんな事をしていないと言う。
伯母とほかのイトコと私が「え?おばあちゃんじゃないの?って、皆まぶしかったの?」

その後1人暮らしだった祖母にも何かあったらしく、墓も仏壇も身内だけに戻った。
先祖が怒ったと祖母は言っていたが、無縁仏さんが他所の家でいたたまれなくて
訴えたんだろうと、私の母はつぶやいてた。 

前の話へ

次の話へ