葬式の写真

15:本当にあった怖い名無し:2007/01/10(水) 22:21:23 ID:o0knYrFN0 

学生時代の友人から急に電話があった。 
記憶の中では彼女は気丈な子だったが、そのときは声が弱々しく震えていた。 
「うちの父親のことなんだけど」 
その切り出しに、私は思わず居住まいを正す。 
彼女のお父さんは2~3ヶ月前に亡くなったという知らせを聞いていた。 
今どき珍しく、彼女は父親っ子だった。 
話の先を促したが、電話では伝え難いことらしい。 

数日後、話を聞くために喫茶店で彼女と会った。 
もともと細い子だったが、少し頬がこけたようだった。 
他愛のない近況報告ののち、おもむろに彼女は一枚の写真を取り出した。 
中年女性が2人と、若い女性と彼女の4人が写っている。 
みな喪服姿だった。彼女とその姉、母親、叔母らしい。 
「父親のお葬式のときの写真だと思う。」 

彼女はそれきり何も言わなかったが、一目でその写真の異常さはわかった。 
一様に俯き、目を赤く腫らしている女性たちの中で、彼女だけが笑っていた。 
それも満面の笑みで。 
その曇り一つない笑顔は、なぜか非常に禍々しいものだった。 
ふと、どうしてこんな写真が存在するんだろう、と疑問に思った。 
葬式の日に写真なんて撮るものだろうか。 

その写真は彼女の父親の遺影がバックに小さく写っている。 
その前景として彼女以外の3人はバラバラのほうを向いて、動き回ってるようだった。 
忙しそうな様子から察するに、葬式の最中ではなく前後だろう。 
彼女だけがカメラ目線。 
「これは誰が撮ったの?」 
わからない、と言って彼女は首を横にふった。 

 

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