443:六 ◆vNIQIce7H6 :2007/01/27(土) 21:24:09 ID:w5e1IdEn0 

学生の頃の話。 
私は、原付で夜道を走っていた。 
田舎なので外灯は少なく、両脇は田んぼなので真っ暗。 
ふと、道の端にある大きめのゴミ袋の様なものが、ヘッドライトに照らされた。 
気になったが、そのまま素通りした。 

すると、丁度横を通り過ぎようとした瞬間、ゴミ袋だと思っていたものが立ち、 
私を追いかけて来た。 
黒い着物を着た人間の様だったが、頭だけが赤黒く目鼻口は見当たらない。 
そいつは、かなり足が速く、距離を保って逃げるのが精一杯だった。 
逃げている内に、追って来るそいつの頭がドンドン膨らんでいるのに気付く。 
前方に民家が見え始めた頃には、膨らみ過ぎて原付のミラーにも映り切らない。 
一瞬後ろを振り向くと、そいつの頭は私をスッポリ覆うほどに巨大化していた。 
それでも速度は衰えず、普通に走って来る。 

私が田んぼの道を抜けると、そいつはピタリと追うのを止めた。 
振り向くと、忽然と消えている。 
帰宅した私は、この話を曽祖母にだけ話した。 

「そりゃ、お前の影だよ。お前に取って代わるつもりだったんだな。」 

曾祖母にまじないを教わってから、もう「影」には会っていない。 
 

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