小さな親切

ダテコさん  2008/02/26 17:35「怖い話投稿:ホラーテラー」
「実家にあるパソコンを自分の部屋に移したい」

先日ボクは、友人の頼みで車を翔らせていました。

出発地点は千葉の市川市。目的地は市ヶ谷駅付近のマンションの一室。

ほぼ真っ直ぐ道なりなのだが、なかなかどうして、初めての道というものは不安になってしまうものだ。
(ボクは重度の方向音痴に加え、地図も見れません)
お昼出発だったのだが、なかなか目的地につかない。そうこうしていると、右手に大きな鳥居が顔を覗かせていた。

かの靖国神社、らしい。

まっっっったく知らなかった、
「へぇー、でっけぇ鳥居?」
見たまんまの感想を放ち、アホ丸出しのボクの横で、ケータイを見つつナビをしていた友人が口を開いた。
「そういやこないだな、ここらの道を歩いてたんだ。予備校終わった後だからもうまっくらでさ。気付いたらだいぶ森みたいなトコにきちゃって。人も居ねぇし道もわかんねぇしで、マヂ焦ったよー」

道間違って森行くなんてあなた…童謡じゃないんだから…ナビ頼んでよかったのかな…?

などと考えつつ、相槌を打つボクを横目に、彼は話を続けた。

「でな、怖かったから独り言洩らしてたみたいなんだよね、ここどこだよ?、って。したらさ、靖国神社って聞こえたんだ。横からさ。マヂびびったよ、イキナリだもん」


何?霊的なサムシングかまされたの?

と食い付く俺に、彼はかおの前で手を振り、苦笑いで答えた。


「違う違う!親切な人が教えてくれたんだよ。実際人居たし。ビビって変な声出しちゃったし、恥ずかし次いでに聞いたの。でもあの人何やってたんだろうなぁ。」

そこは木ばかりの、文字通り『林道』だったらしい。
「暗くて顔も見えなかったけど、親切なひともいるんだな」


そう言い、微笑む友人に心の中でツッコミつつ、車を進めた。





カチッ






道なりに進む俺の車に、聞き覚えのある音が鳴った。




ウィンカーだ…




右に出てる……何故…?



ふと目をやると、




門(というか入り口?)がある








ああ…なるほどな…。



こいつ……気に入られちゃったんだ…。


彼はウィンカーに気付いていなかった。


ボクは、ウィンカーを戻した…彼が気付かないように。


違和感を覚えなければ日常足る事象だ。


彼の中では、この話は美談で終わるだろう。




ボクは何も言わない。

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