夕焼け

856 :1/2[sage] :03/10/24 06:02

受験生の頃のお話。
高校生の時、私の学校からは「政治経済」で大学を受験する人が 
いなくて、政治経済の先生とマンツーマンで勉強していた。 
その頃私は、放課後に志望大学の過去問のテキストを持って、 
先生へ質問に行くのが日課になっていた。

ある日、たまたま同じ準備室にいた日本史と世界史の先生が不在で 
二人きりになった。 
丁度このくらいの季節で、日が沈む前の夕焼けがすごい色をして 
室内を照らしていた。

「──あれ?」

私は、不思議な事に気付いた。 
普通、放課後でも部活動をやっている人が必ずいるはずで 
ブラスバンドも毎日演奏しているはずなのに、 
私達のいる部屋は無音だった。

それも数分なら分かるが、たっぷり30分は誰も廊下を歩かない(走らない)。 
誰の声もしない。何の音楽も聞こえない。 
私は変だと思い、ちょっと外を見てこようと思ったが、先生に教えてもらっている 
最中に席を立つのもどうかと思い遠慮していた。 
が、先生も変だと思ったのか外を気にしている様子だ。

「先生…何か変じゃありませんか?」 
「ん…そうだな」 
「ちょっと私、見てきます」
ようやく私は立ち上がり、そろそろと部屋の引き戸を開けた。

──瞬間、うわんッと音が戻ってきた。

「えっ!?」

びっくりした私は、廊下を歩いていた生徒に変な顔をされた。 
振り返って先生と目を合わせると、先生も驚いていた。

この部屋は、ただの社会科準備室で防音も何もしていないし、 
何故?と思った。 
でも結局先生も私も理由は分からずじまいだった。

ただ、あの日の異様な夕焼けだけが印象に残っている。 
そして、これは全く関係無いが、先生と私は今月結婚式を挙げた。

前の話へ

次の話へ