二股

266 本当にあった怖い名無し sage 2013/09/10(火) 02:26:20.03 ID:m4SIJDH80

俺が大学2年の頃、バスケの練習試合で足の靭帯を断裂して入院したことがあった。 
地元から離れた大学に進学していたがため、1ヵ月という長い入院期間も考えて地元の病院に入院することにした。 
当時俺には同い年の彼女がいて、彼女は大学で知り合った華奢な童顔の女の子だった。以後A美とする。 
A美はお見舞いにこそ来たがったが、入院先が余りにも遠いため1日一回の電話を約束に遠慮してもらった。 
いざ入院して手術が終わると、その後1ヵ月の車イス生活が保証される。笑 
右足の靭帯を手術したので、右足だけ地面と水平に固定された状態で車イスに乗っていた。 
そんな状態だったので、特にすることもなく、楽しみといったら可愛い看護師さんを眺めるくらいだった。 
看護師さんの中でも断トツで可愛かったのが俺よりも4つ年上のB子さん。 
A美と同じく華奢で、若干つり目が印象的な、俺としてはかなりタイプだった。今考えるとどうしようもないクズ野郎だが、当時の俺はかなり盛っていて、彼女がいるにも関わらずB子さんを口説くことに夢中になっていた。 

B子さんはなかなかガードが固く、口説くのにも一苦労だった。最後は俺のしつこさに負けてか電話番号とメールアドレスを教えてくれた。 
それからというもの、メールのやりとりなどを盛んにおこないB子さんの素性がわかり始めた。どうやらB子さんには彼氏がいるらしく、もう6年間も同棲しているという。
少し残念だった。しかし、うまくいっていないようで、口も聞いていないそうだ。 
これはチャンスとばかりに猛アタックし、俺はB子さんと付き合い始めることになった。 

それからというもの、俺はA美とB子さん、二足のわらじ生活が始まったのである。 
B子さんは俺の病室によく顔を出すようになり、 B子さんに気づかれないようA美に日中ちょくちょくメールを送り、
B子さんが帰ってからA美と電話、B子さんが家についた頃を見計らってB子さんと電話するといったキ○ガイじみた二股だった。 

電話は、もちろん病室ではできない。俺の部屋は4階だったが、電話できるスペースは1階のホールしかない。
いつも仕方なくエレベーターで降り、電気の消えたホールで寂しく 
電話していた。 
怖かったのは、夜のホールは「出る」らしいという噂であった。なんでも、1年前に亡くなった女の子の幽霊が出るというのだ。 
その女の子は喘息持ちだったようだ。ホールで発作が起こり、薬を吸入しようとしたが、薬が空になっており、 
助けを求められずに苦しみながら死んでいったという。巡回していた看護師さんが気付いていれば、助かったかもしれないが。 
そんなこんなで、ホールで電話するのはあまりよい心地ではなかった。 
一方、B子さんとはかなり仲良くなり、退院したあとB子さんの手料理を振る舞ってもらう約束も、B子さんの家にお泊まりする約束まで取り付けた。 
もちろんB子の方がA美さんより好きだったので、A 子さんはあわよくば現地妻(地元だけど笑)みたいにしようと思っていた。我ながらゴミみたいな人間だ。 

ある日、B子さんが俺の病室に来ない日があった。俺は、今日は忙しいんだろうぐらいにしか思っていなかった。 
夜になって、いつものようにホールに降り、A美と電話していた。 
そしたら、A美が変なことをいい始めた。 
A美「なんだかカチカチ聞こえるんだけど?」 
俺「カチカチ?なにそれ?どこから?」 
A美「電話越しに聞こえるのよ。回りに誰かいるの?」 
俺「怖いこと言うなよ、気のせいだろ?」 

俺も怖くなったので、夜遅いからと理由をつけてA美との電話を切った。 
このカチカチは、死んだ女の子の警告だったのかもしれない。 

さて、次はB子さんとの電話だ。 
電話を掛ける。 
プルルルルプルルル 

その時ゾッとした。俺の発信と同時に、ホールに他の携帯の着信音が響き渡ったのだ。 
辺りを見回すが誰もいない。 
「B子さん?」 
声がうわずった。もしや、A美との電話を聞かれていたんじゃ? 

ツーツー 

電話は切れた。響き渡っていた着信音も消えた。 

チビりそうだった。1階の便所は怖すぎる。早く4階に上がって用を足してベットにくるまりたい。エレベーターのボタンを連打し、乗り込む。「4階です」というアナウンスと共に扉が開く。 

B子さんが立っていた。笑っていた。 

「こんな遅くにどうしたんですか?」 
「今日は夜勤よ。それよりあなたこそこんな遅くにどうしたの?」 

そのあとの記憶があまり定かじゃない。なんとか取り繕って、ベッドに帰り、事なきを得た気がする。 
それからしばらく、病院でB子さんを見なかった。メールを送ってもメールは帰ってこなかった。電話もでなかった。 

ある日、A美とも連絡がとれなくなった。 
次の日、友人から電話がかかってきた。A美の家が全焼したという知らせだった。 
2体の焼死体が発見された。遺体の状態がひどく、性別もわからないらしい。 
おれはなんとなく、A美が死んだことを悟った。A美は一人暮らし。どうせおれの入院中に他の男を連れ込んでいたんだろう。 
もう一人ぶんはその男のものだ。心は痛まなかった。 
むしろこれでB子さんとずっと一緒にいれる、そう思っていた。 

退院後、おれは松葉づえをつきながら、B子さんの家を訪れた。 

B子さんと、たわいもない話で盛り上がったり、手料理のナスの炒めものはとても美味しかった。
B子さんは、おれのことを殺してずっと家においておきたいくらい好きだといってくれた。おれは、防腐処理だけはしてくれよと笑った。 
B子さんはかわいそうな人だった。 
同棲していた付き合った彼氏が1年前に浮気したのだ。相手はB子さんの病院に入院していた女だったそうだ。
吸引器がカチカチうるさくて、しゃくにさわる。でもB子さんは優しいからカチカチが好きならと、たくさんカチカチしてあげたそうだ。 


同棲していた彼氏とは別れた。彼のものは1年間も未練がましく保存していたけど、この前焼いて捨ててしまったそうだ。 
おれはなんだか怖くなって全速力で走って逃げました。なんとか逃げ切り、今に至ります。みなさんは浮気しないでください。彼女がかなしにますよ。 

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