猫と排水管

821:猫と排水管:2008/02/05(火) 07:34:16 ID:JDiI3Kb10

自分がまだ小さい頃のこと。 
近所では沢山の猫を見かけたんだ。 
町営の団地に住んでいて排水溝などの設備もあった。 

高低差がある場所などはコンクリで覆ってあって、 
地面から1メートル以上も高くなっている事もあった。 
小さい自分はそのコンクリの壁をよく見上げたものだ。 
ある時、近所の猫を後ろから追いかけていた。 

そしてコンクリの壁に開いている配水管に 
猫が入っていくのを自分はそのまま追いかけた。 
排水管を覗き込むと猫がこちらを振り返って見ている。 

目線を送り配水管の向こう側をみると地面があり、 
草も生えていてまるで春のような感じの場所があった。 
小さい自分はその光景を目にして心の中で 
「ああ、いいなあ…ここをくぐれたら行きたい」と思った。 


ずっとその事が気になったまま、時だけが流れ… 
最近になってふいっとその場所に通りかかる事があって 
そうだ、あれはどうなっているのだろうかと確認すると… 
排水管の先は真っ暗で何も無かった。 
排水管は地中に埋まっていて覗き込んでもただ暗いだけなのだ。 

しかし、未だにあの光景を忘れる事が出来ない。 
ひょっとしたら、猫だけが行ける世界があるんじゃないかと。 
今でも、心の中でひっそりと信じている。 



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