学校内の開かずの間

447 名前: 1/6 2006/07/20(木) 05:32:59 ID:/sv4a/+U0
俺の通っていた中学校は、団塊ジュニア世代が大量入学するのに備えて新たに設立されたため、学校の校舎はかなり大きな建物であった。 
しかし俺が通っていた頃には既に生徒数も減少し、幾つもの空き教室が存在した。
その学校自体が丘陵地の斜面に建てられていて校舎へ入る玄関は建物の2階部分、また校庭もその2階部分と同じ
高さにあり、空き教室は全体的に日当たりのよくない北校舎の1階部分に集中していた。 
1階の空き部屋は5つもあり、そこには使われない卓球台とか大きな地図版とか体育祭や文化祭で使った様々な用具が無造作に置かれ物置と化していた。 
そしてその5つの空き教室は全て扉が外から施錠されており、立ち入り禁止となっていた。
 だが、5つあるうち2つの教室は廊下側の窓の鍵が開いていたので、それを知っている一部の生徒が無断で侵入して
隠れてタバコを吸ったり、シンナーやっていたり、中にはそこでセックスをするツワモノもいた。
 これらの5つの部屋は全て、廊下側も外側も窓に黒いカーテンが掛かっており、入れるほうの2つの部屋も 
このカーテンをキチッと閉めてしまえば外から分からなくなる。 
又、その2つの部屋に入った後、廊下側の窓の鍵を内側から閉めてしまえば、後から来る邪魔者も防げて隠れて何かワルサするのに便利だった。
 もっともこんな退屈な場所、普段みんな遊びに行かなかったけどね。

俺もたま~にこの2つの入れる空き部屋に行ったことがある。 
大概は部活をサボっての暇つぶしで、友人と
一緒にちょいとタバコを吸ったり(時効)エロ本持ってったり、ビール持ち込んで菓子食いながら酒盛りしたりしていた。
 これらの部屋は一応電気も通っているのだが、外が暗くなってから電灯を点けると教師にバレてしまうので、
日のあるうちはカーテンをちょっと開けて外光を取り入れたりしていた。 
が、どっちにせよ部屋は北向きで暗いし、外はすぐに木々の生い茂った丘陵の上り斜面が迫っており鬱蒼とした雰囲気。 
あまり長居したくない場所だった。
 ここについて生徒間では、元々墓地だったとか、戦国時代の古戦場だったとか、そのため幽霊が出るだとか
噂されていたが、実際は別にそんな場所ではなかった。 
(余談だけど隣町に結構有名な心霊スポットがあり、そっちの方が知られていた)
 ところがある日、あの空き教室には何かいるんじゃないかって噂が立った。曰く、カーテンに位置が前日から
少し変わってるとか、夜中に学校の傍を通りかかった時、窓に薄明かりが灯り、ゆらゆら揺れる人影が見えたとか、そういう話だった。
 だがそれは、我々生徒が侵入できる2つの部屋の方じゃないのか・・?カーテンの位置が変わっていたのも外光
を取り入れるために動かした奴がいるんじゃないのか・・?夜の明かりだって人を脅かすためのデマか、本当
だったとしても多分夜中にあの2つの教室に入ったか、残ってたかしてたんじゃないのか・・?俺自身、友達と
一緒に夜中にこの2つの部屋に肝試しに行ったし・・・。

 ところがその「噂になった部屋」は、生徒が無断侵入できる2つの部屋の方ではなく、完全に閉ざされ侵入
出来ない3つの部屋の、一番奥だという・・・。まさかね~。
 結局生徒の噂もあったし、ちょうど一学期の終わりで夏休みを迎える時期であり、大掃除がてらちょいと
調べてみようかということになった。
 運が良いのか悪いのか、その「開かずの間」を掃除することになったのは俺のクラスだった。 
たまたま「開かずの間」の管理を担当していたのが俺のクラスの担当だったからだ。
 放課後、我々はその「開かずの間」に向かった。クラス全員で行ったのではなく学年全体で学校中のあちこちの
掃除を分担することになっていたため、その「開かずの間」へ行ったのは俺を含めて10人ほどだった。
 「開かずの間」ではない最初の2つの部屋には特に異変は無かった。 
もっとも大量に発見されたタバコの吸殻やビールの空き缶などは先生にとっては十分「大異変」であった。 
(後に全校集会でこってり絞られることになる)

 そして遂に、本当の「開かずの間」である・・・。
 3つある「開かずの間」のうち最初の2つは別に何とも無かった。様々な用具が雑然と置かれていて、
誰も侵入した形跡がないのは部屋全体に一様に降り積もったホコリの量からも明らかだった。
 ・・・そして残る最後の部屋・・・一番奥で、一番北で、一番薄暗い部屋・・・。実はそここそが例の
噂が立った曰く憑きの「開かずの間」である・・・。
 先生が扉の鍵をガチャガチャ音を立てながら開けた・・・。
 元々校舎全体の陰にあって薄暗い場所である上、真っ黒なカーテンで窓を全て閉ざされているため部屋は
闇に包まれていた・・・。そして、何と言っても鼻に付くすえたようなニオイ・・・。
 なんだ・・・このニオイは・・・?
 俺は一番に部屋の中に入った。なんか好奇心で勢いづいてしまったのだ。後に続いた先生が部屋の明かりのスイッチをONにした。
 ・・・・何だこれは!!・・・・(岡本太郎風に)
 そこにはボロボロになった布団らしきモノ、煮しめたように汚れた作業服らしきモノ、ウイスキーの空き
ボトルや、開けられて残った中身が腐りきった缶詰、なぜかボロい鍋や汚れた皿なんかもそこにあった・・。
週刊誌やエロ雑誌、ボロボロの歯ブラシ等日用品も散乱していた。 
壁から壁にボロいロープが張られ、そこには汚れたタオルやシャツや下着類が吊るしてあった。

 この部屋には誰も侵入できなかったはず・・・なのに何だ・・・この有様は・・・・。
 ・・・もしかして・・・誰か住んでる・・・?!
 俺は唖然として立ち尽くしてしまった。普段気の強い親友のNもいたが「何だよ・・・これ・・・」と言ったきり黙ってしまった。 
女子は皆気味悪がって誰も中に入ろうとしない・・・。
 先生もどうしていいか分からないようにボーゼンとしている・・・。一緒に来ていたYという女子が「先生・・・
誰か呼んできた方がいいんじゃないですか・・・」と消え入るような声で言うと、ハッとしたように我に返り、
「そうだな・・・うん・・・そうだ!」とか言って誰かを呼びに駆け出して行ってしまった。
 ・・・・普通、生徒に呼びに行かせるだろ・・・?・・・こんな状況で現場に生徒だけ残すか・・・?
 どうやら今は部屋には誰もいないことが分かり、俺やNは部屋の奥の方へ入っていった。 
とにかく酷いニオイだ・・・。脂汗の酢酸臭、垢じみたニオイ、物の腐ったニオイ、カビ臭さ、生臭さ・・・。
 床に学校指定のジャージが落ちているのに気づいた。えらく汚れていたが間違いなくそうだ。
 何でだろ?そう思い、手にしていたホウキの柄でそれを引っ掛け持ち上げてみた・・。


 ・・・・何かがこびり付いている・・・カピカピに乾燥したものや、乾燥しきれずに粘度がまだ残っているものもあった・・・
何だ、この白いモノは・・・?
「これ・・・もしかして・・・ザーメンじゃねえ・・・?」
 いつの間にか隣に来ていたNが言った・・・・・そして俺もそう思った・・・。
 よく見ると床のあちこちに指定のジャージや体操着がある・・・。なんと制服のブレザーやスカートまであった・・・・。
「ウゲェェッ!!」
 俺は急に吐き気がして、手にしていたジャージをホウキごと床に放り投げた・・・。

 その後、警察が来た。部屋中あちこち調べまわり、確かに侵入者がいてここに居住していたらしいと判明した。
しかし、肝心に侵入者は結局捕まらなかった・・・。また、どこから侵入したかについては何も教えてくれなかった・・。
また最近、女子生徒の衣類が何度も紛失していたことも知った・・。
 まもなく夏休みに入ったが、休みを前に学校側から「不審者に注意」と強く勧告された。
もちろん生徒全員はそれを強く「肝に銘じた」はずだ・・・特に女子生徒は・・・。
 ・・・・その後、あの一番奥の部屋も含めて全ての空き部屋が各クラブの部室として解放された。
使わないよりは使ったほうがいいという学校側の判断だろう。あんなこともあったし・・・。
 で、例の部屋だが、そこは野球部の用具入れになった。
 女子ソフト部の部室って話もあったが、立ち消えになった。
 そりゃそうだろ・・・。 ザーメンまみれだったからな、あの部屋・・・。(了)

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