穴の奥

594:小学生の時の話1:2009/05/30(土) 00:36:13 ID:cnZZyZi+0

これは僕が小学生の時に体験した話です。
話が長いうえに誤字脱字があると思いますがご了承ください。

季節は夏休みも間近に迫った七月の上旬だったと思います。
まだ完全週休二日制ではなく、土曜日には半日だけ授業があり、
正午頃には学校から帰り、昼飯を食べその後に友達と遊びに行く、
というのが当時の小学生の一般的なライフスタイルであり、
僕もその例外ではありませんでした。

その日も昼飯を食べ、その後によく遊んでいた友人2人と合流し
ザリガニ捕りに近くの用水路まで行くのがおきまりの遊び方でした。
しかし、その年は空梅雨で用水路の水は干上がり、とてもザリガニが取れる状況ではなく、
僕らは当てが外れてどのように遊ぶかを決めかねていたところ、
僕らのグループのリーダー格であった者が、
「こんだけ用水路に水がないのは滅多にないことだから、用水路探検しようぜ」と、
提案してきました。

誰も代替案を考えつかないのと、「探検」という文字が子供心をくすぐったのとで、
その日の遊びは満場一致で用水路探検に決まり、直ぐに実行されることになりました。

僕の住んでた町は都会とは言い難いですが、
田園風景が広がるほどのド田舎ではありませんでしたので、
用水路と言っても、子供の背丈ほどの浅いものから、
コンクリートで両壁を囲まれ、その壁の高さが何メートルもあるような物まで様々でした。

最初は、自分達のいる場所から一番近いという理由で、
上記で上げた物の前者に当たる浅い用水路を探検することになりました。
浅いといっても用水路に降りれば、子供の目線からはそれなりの高さになりますし、
通常では水位が高く行けないような場所まで行くことができ、十分に僕らの興味を引くものでした。

そして、あらかた浅い方の用水路探検は終わったので、
今度は深い方の用水路探検に行くことになりました。
深い用水路はどこからでも降りることができる高さではないので、
用水路の端にある専用の階段から降りることになりました。

用水路に降りてみたら浅い用水路とは比べ物にならないくらいの迫力で、
両端には自分の背丈よりも何倍もあるコンクリートの壁がそり立ち、
地面には空き缶やらのポイ捨てのゴミが転がり、
目の前にはそれらの光景が50メートルほど続いて、
その先は緩やかな右カーブになっていたので先がどうなっているかはわからない状況でした。

友人2人はこの非日常を味あわせてくれる光景に大変興奮していて、
我先にと先頭を争うようにずかすかと歩いて行ったのですが、
僕自身は、もう日が落ち始めていて薄暗くなってきていたので軽くビビッていたのか、
それまでのテンションとは逆に乗り気ではなくなっていたので、
列の最後尾からついて行く形で進んで行きました。

用水路に降りて進んで行くうちに先頭を歩いていた友人の一人が、
「なんか穴があるぞ!」と、突然言い進行を止めたので自然と列が止まってしまいました。
『なんだ?』と思い、最後尾からついて行くだけだった僕も前方をよく見たら、
確かにコンクリートで固められた側壁に穴のようなものが見て取れました。

ゆっくり近づいて行くと確かにその穴は存在していたのですが、
その穴は工事によってちゃんと作られたような物ではなく、
スコップや何か固いもので、掘るというよりも打ち砕いたような感じで
作られた歪な形状をした穴だったのです。

「すげーなんだよこれ!」「この穴奥どうなってんだ?新発見じゃね?」
等と、友人たちは興奮がピークに達していたのですが、
僕はその穴を見た時からなぜかその穴の暗闇の中から誰かに覗かれているような
嫌な感じがしていたので、『早く帰りたい』と思い、
再び友人たちの最後尾よりも二三歩後ろに下がって見物していました。

そうしていると、あろうことか友人たちはその穴の中に入らんばかりに
身を乗り出して観察を始めたのです。
「おい、危ないって、やめよーぜ。」と、僕は制止を訴えましたが、
子供の好奇心に火がついた状態にその言葉は無意味でした。
友人の一人が持っていた、発行する腕時計を明かり代りに
その穴を観察している友人たちを横目に、
僕はその穴を見ているのが怖くなったので、穴とは逆方向の用水路から
出るための階段方向を眺めていました。

そうしていると突然に「うわあああああああああああああ」
「いいいいいいいいい」と言う叫び声と共に
さっきまで穴に夢中だった友人たちが我先にと用水路の出口に全力で走って行ったのです。
「え?何?は?」と、僕は状況を理解できなかったのですが、
この場の嫌な雰囲気と友人たちのあの行動から、
その場がとてもヤバいことだけは直感で理解できたので、
僕も全力で階段のほうに走って逃げました。

僕は足が学校で一二を争うほど早かったのですが、
全力で何かから逃げて行く友人達には追いつけず離されないようにするだけで精一杯でした。
友人達が階段を我先にと昇り、近くのコンビニの駐車場まで走ってようやく
先頭の友人が止まり(半ば倒れるように)、追いつくことができたので、
友人が喋れるまで待ってから、「何があったんだよ、冗談だったらマジキレるからな」と、僕が状況説明を求めるのに誰も話そうとせず、

「言いたくない」の一点張りで誰も頑として喋ろうとしなかったのですが、
僕もこのまま引き下がる訳にもいかず、食い下がったら友人が、
「穴の奥を覗こうとして中に二人で乗り込んだら、
奥の方で真白な何かが動いていて何かと思って目を凝らしていたら
凄いたくさんの人がこっちを向いてたんだよぉ」。
二人目の友人もだいたい同じこと言ってたんです。

小学生ということもあり何かの見間違いという可能性もあるんですが、
僕自身はあの穴は〝見てはいけない〟部類のものなのではないかと今でも思います。 

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