某国の恐怖体験

231:1/5:2009/06/06(土) 22:03:16 ID:HZZJCGmj0

数年前私がまだネットも2ちゃんねるもやっていなかった頃、ブーム
という言葉に乗せられてとある国へ旅行へ行ったことがある。

旅行は大して面白くも無く、免税店くらいしか行くような場所もなかった
のだが、その晩に恐ろしい体験をした。
夜の10時頃だったと思う。

夜中の外出は治安の関係でしないほうが良いと言われていたのだが、
なんとなく寝付けず少し夜風に当ろうと外出する事にした。
出国の再に注意などされていたので、ホテルの従業員に外出を咎め
られるかと思ったが、そんな事は無くあっさり出られたので、私は地図を見て
近場にある山の中の公園まで散歩した。

公園の入り口に差し掛かった頃だろうか、林の中に白っぽい服を来た
人がたたずんでいるのが見えたのだが、私は「こんな時間に?」と少し不思議に思った。

あまりその事は気にせず、暫らく公園を歩いているとある異変に気が付いた。
白っぽい服を着た人は1人では無く、気が付くと公園の林の中に無数にいる。

その人々は何をするわけでもなく佇んでいたのだが、暫らくすると一斉に
林を出て公園の中心部辺りに集まり始めた。

私は「ちょっとこれはまずいかな…」と思い、その集団を迂回するように
早足に帰ることにしたのだが、そこで2つ目の異変が起きた。

白っぽい服を着た集団が、突然奇声を上げたかとおもうと、集団の中の
一人の男が隣の老人に噛み付いた。
そしてあろうことか噛み付いたまま肉を引きちぎり貪り食い始めた。
更に男と言わず女と言わず、その男の奇行がまるで開始の合図だったかの
ように、お互いがお互いを殴り飛ばし、蹴り、噛み付き、貪り食い、犯し、凄まじ
い阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り返された。

私はあまりの出来事に半ば呆然としていたが、これはまずいと走って
逃げ出し、ひとまず警察を呼ばなければとホテルへと急いだ。
後ろからはまだ悲鳴とも絶叫とも言えない恐ろしい声が響いてくる。

公園の出口に差し掛かった辺りだろうか、ふとその奇声が聞こえなくなった。
私は反射的に振り向いた。
すると先ほどまでの地獄絵図が嘘であったかのように、あの光景が
一瞬のうちに消えていた。

私は何が起きたのかさっぱり解らず、「あれは幻覚か夢だったのだ」と
自分に言い聞かせ、翌日その国を後にした。

旅行から帰ってから数日後、私に異変が起き始めた。
ちょっとした事で他人の言動が癇に障るようになり、周囲に人々に当り散らす
ようになり、更に昼夜を問わず異常な空腹感に苛まれるようになった。

しかも食べても食べても満腹になれず、それどころか私の体はみるみる
痩せ細り顔色も悪くなっていった。
自分でもこの異常な状態に気付いていたため、何件か病院へも行って
みたのだが、医者はストレスだろうと言うばかりで、状況が一向に改善しない。

そんな日々が数週間続いた頃だったと思う。
私は仕事が遅くなり、終電を逃してしまったためタクシーで自宅に帰る事にした。
タクシーを呼び止め車内に乗り込むと、どうもタクシー運転手の様子が
おかしい、会話も無くちらちらとこちらを伺っており、非常に挙動不審で、
私はイライラして不機嫌そうに「なんだ?」と文句を言った。

するとそのタクシー運転手はぽつりぽつりとこんな事を言い始めた。
「こんな事は言いたくないのですが…あなたには何か非常に恐ろしいもの
が取付いています、最近身のまわりでおかしな事はなかったですか?
早急に御払いをした方がいいと思うのですが…」と。

私は心当たりが十分にあったが、急に恐ろしくなり「もうここでいい!」と
運転手に言うと、料金を払いそのまま後は徒歩で家路についた。

翌朝、私は昨晩のタクシー運転手の言葉が気になり、最近の出来事が
不安でもあったため、「体調が悪いから」と会社を休むと、実家のほうに
ある本家が檀家をしているお寺へと相談に赴いた。

お寺に到着すると、住職は私の姿を見るなり何も言わずに「とにかく
こちらへ」と本堂へ誘導し、そのまま何の説明も無いうちにお払いが始まった。

お払いが終ると、住職は私にこんな事を言い始めた。
「あなたは最近某国へ行きましたね?最近あの国からよからぬものを
持ち帰ってしまう人が増えている」「あなたもそういうよからぬものに
憑かれていた」と。
そして更に住職はこう続けた。

あの国は数百年、もしかしたら千年以上も餓鬼道に堕ちた状態が続いて
いる。その状態のまま人が死ぬとそこに囚われ、逃れる事もできずに
怨念の吹き溜まりの渦ようなものができている。
もしここにこなければ、あなたもいずれその吹き溜まりに取り込まれていただろうと。

そして住職は、私はあなたに憑いていたものを成仏させたわけではない、
「元の場所に送り返しただけ」なのだという。
更に住職はこう続けた。

我々外国人は、あの国の中ではまるで闇世の中の光のようなものなのらしい。
怨念の渦のなかから逃れたい人々は、外国の人を見かけると、渦から
逃れたいがためにその人に取り憑くのだと。
あの地域そのものは最早どうにもならない、だから私達に出来る唯一の
自衛手段は「係わり合いにならない事なのだ」とも言っていた。

これ以降私の体調は元に戻り、精神的にも以前のように落ち着くことができた。
そして、私は二度とあの国へは行くまいと心に誓った。

以上です 

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