赤沼

526 : 本当にあった怖い名無し : 2011/10/31(月) 23:37:40.44 ID:ph4nWGQP0 [2/2回発言] 
十和田湖温泉郷の奥に有名な蔦温泉の蔦七沼があります。 
七つの沼のうち、赤沼だけがひとつ離れた高台にあり、若干山道を歩く必要があります。 
何時の頃からか、この赤沼の沼尻には、白骨化した一本の奇妙な倒木が立っており、 
その姿は湖面に二本足で起立する名も知れぬ怪物のようで、存在感があります。 

ある秋、写真撮影のため、夜明けの一時前に仙人橋から赤沼に入りました。 
熊笹の中から狭い沼尻に飛び出すと、突然目の前に件の怪物が現れます。 
その時、奴の影が動いているように見えハッとしました。よく見ると先客が一人、 
影の所で怪しむように此方を伺っています。まぁ怪しいですよね確かに。 

話してみると同じく撮影目的との事で、しばしカメラ談義に花が咲きました。その内、 
男性はちょっと黙り込んで「この枯れ木は何時からあるんでしょう」と尋ねてきました。 
「よく知りませんが、二、三年前にはあったようです」「…そうですか」 
まもなく日が昇り、湖面に映る赤倉岳の紅葉をひとしきり撮った後、男性と別れました。 
別れ際に男がこんな話をしました。 

実は先日の台風の前に、蔦温泉から松森を経由して仙人橋に降りたのだそうです。 
その際ここ沼尻を通過した辺りで日が暮れてしまいました。薄明の中、沼尻にいた女性に 
挨拶しようとしましたが、なんとなくはばかられたので、そのまま通過したそうです。 
で、今日来てみると、女のいた水辺に、先日はなかった奇妙な倒木があったので、 
驚いて眺めていると、ザワザワと音がして私が現れたという事でした。 

最初、台風で倒れたと思ったそうですが、一見して古いので、見間違えたのだろうと 
笑っていました。男と別れた後、しばらく倒木を眺めていましたが、 
誰もいない湖畔に、二人?だけで居るのが不安になったので、早々に退散することに。 
松森へ向けて湖畔を巻くように登っていく間、木々の間から沼尻が見えます。 
が、変なものが見えると嫌なので、振り向くのは止めておきましたよ。 

う~ん、まぁ単にこの男性に一杯かつがれただけなのかも知れません。 
ただ、何がはばかられたと言うと、ちょっと古風ないでたちの女性に見えたのだそうな。 
それ以来、赤沼には行っていないので、奴?がまだいるかは不明です。(多分いるはず) 

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