騙されて肝試し

415 : 本当にあった怖い名無し : 2011/09/15(木) 02:55:33.55 ID:EB1CUexe0
今から8年ほど前、彼氏とその友達と、私と私の友達との6人で遊んでいて、 
山に肝試しに言った時……というか、騙されていった時の話です。 
車の中でその話を急に言われて私と私の友人は怒りましたが、 
チャラ系だった彼氏は聞く耳を持ってくれませんでした。 

向かった山には廃神社が山の中に転々とあるような場所らしく、 
そういった怖いのが苦手な私は、とても気持ちが暗くなっていました。 

その彼氏の友人の中に、いわゆる「友達の友達」の男の人(Rさんとします)が1人いました。 
最初に紹介された時に挨拶したのですが、Rさんはにっこり笑って会釈をするだけでした。 
車の中でも、楽しそうに話す彼氏達をよそに、Rさんは、 
一人で音楽を聞きながら真っ暗な外をずっと見ていました。 
結構イケメン+金髪茶髪がほとんどだったメンバーの中でも一人黒髪だったのもあり、 
何というか、色んな意味で目立っている人でした。 

車を止め、さあここから山道を歩いていくぞと言われた時、正直泣きそうでした。 
懐中電灯があるとは言え、あたりは本当に真っ暗。 
私はミュールを履いていましたし、草木も生い茂っていて…… 
道中、私はずっと彼氏の腕に抱きついていました。 
やっべーやっべーとかバカ笑いしている面子にイライラしながら。 
そのまま数分、懐中電灯で照らしながら歩くうちに、すぐに行き止まりに行き着いてしまって、 
彼氏とその友人達は少しガッカリした様子でしたが、私はもう帰れると思い少し安心しました。 

そうして、皆が引き返そうとしたときでした。 
パキ、パキ、と何かが枝を折るような音がこちらに近づいてくるのです。 
一瞬にして全員硬直し、じっとその場から動けずに居ると、やがて、 
懐中電灯の明かりに照らされた、それが現れました。 

それは一言で言うと、 
「等身大の黒い日本人形を乗せたリヤカーと、それを押す黒い2つの手」 
でした。手より向こうはどういうわけか何も居なかったのです。 

黒い手はゆっくりとですが、リヤカーを押し進めながら、こちらに近づいてきました。 
しばらく皆固まっていましたが、誰かが声にならない声を上げ、 
それに続くように、リヤカーの脇をすり抜けながら全員走り出しました。 

本当に運の悪いことに、このタイミングで私のミュールの紐が切れてしまい、 
足を挫いてしまいました。痛くて走れないので思わず彼氏の名前を呼びましたが、 
彼氏は私を置いて逃げてしまっていました。 
異形のものが居る、深夜にも近い時間の山奥にたった一人。 
私はずっと泣き叫んでいました。 

しかし、パキ、とまた音がしたと同時くらいに、一人、引き返してきた人が居ました。 
Rさんでした。この状況で戻ってきてくれる人が居たという事実に、 
嬉しさというより、驚きの方が強かったです。 
「立てるか?」という声に、私は首を振りました。Rさんが歯軋りしたような顔を浮かべた時、 
私の左側に、あのリヤカーと黒い手がすぐそこに居ることに気付きました。 

息が止まりそうにりましたが、ふとRさんの方を見ると、彼はニヤリと笑っていて、 
「ちょっと此処で待っていてくれ、話をしてくる」と突然そのリヤカーに近づいていったのです。 
そのまま黒い手の側に行き、身振り手振りで何かを話していました。 
黒い手は、Rさんと、暗闇を交互に指差しているような動作をしていました。 
数分後、スタスタと帰ってきたRさんは私を負ぶってくれ、そのまま運んでくれました。 
後ろが気になりましたが、振り向く気にはなりませんでした。 

車があった所に着くと、なんと彼らは私達を置いて逃げていたのです。 
この時点でもう、彼氏とは別れるつもりでいました。 
ため息をついたRさんは、「このまま来た道を歩くしかないなあ。」と、 
なんと、私を負ぶってそのまま2キロほど歩いてくれました。 

そうして最終的に最寄の駅のタクシー乗り場まで着いて、 
私達はタクシーで帰りました。 
車の中で、さっき、何を話していたんですか?と恐る恐る聞くと、 
Rさんは「一応、謝ってきた。」とだけ言いました。 
私はと言うと、もうRさんに惚れてしまい、その場で付き合って欲しいと言いましたが、 
「絶対言うと思ったw止めといたほうが良いよ、そういうのは、止めといた方が良い」 
と言われてしまい、そのまま何も言えませんました。 

その後、元の彼氏からは何度か連絡がありましたが、 
はっきりと交際を断りました。 

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