鉄砲水の話

601 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/04/06(水) 08:11:25.75 ID:vB5mhmQd0
前に何処かに書いた気がするが、渓流釣りが好きな友人の話 

渓流釣り、特に源流まで分け入るとなれば、釣りよりも 
沢や崖を登っている方が長いというような、登山なのか釣りなのか 
よくわからないような状態になる、時には岸が切り立っていて登れず 
滝壺を泳いでわたったり、足場が悪く苔で滑る滝の横を登ったり、 
はたまた山ダニや山蛭の猛攻に悩まされながらのか、なりきつい行程となるのだが、 
釣り人本人は目の前に魚がちらついて苦にも成らない、当然日帰りが不可能な場合も多く 
キャンプの用意をして沢に泊まることもしばしばだ、中には数日間居続けて 
釣った魚はその場で薫製にして持って帰る強者まで居る、こんな状態であるから 
「怖い」体験にも事欠かない、転倒・滑落など登山に付き物の体験は言うに及ばず 
目の前の斜面から熊が駆け下りてきたりとバラエティに富んでいる、 
そんなも源流行をしている友人が、死ぬかと思ったといつも言っているのが 
鉄砲水の話だ、 

そのとき友人は数人でいつものように釣りながら源流に向かって、 
遡上していたらしい、まあ、そこそこの釣果を得て真っ暗な中で火をおこして 
釣った魚をおかずに夕食をすませ、次の日のルートなどの打ち合わせを済まして 
就寝したらしい、所がどうもいつもと感じが違う、寝付かれないと言うのか 
取り立てて、なにかが聞こえると言う訳ではないが気が付くと外の物音に耳を澄ませている 
自分に気が付く、そんな感じだったらしい次の日もきつい行程だから寝ないと不味い 
と思った友人は持ってきていたスキットルからウイスキーを煽って無理矢理に寝てしまったらしい 
何時間くらい寝ただろうか、不意に誰かに起こされた気がして飛び起きた周りを見ると 
他の人達もまさにタイミングをぴたりと合わせたようにガバッっと言う感じで起きている。 
テントの外の様子を伺うと小雨が降っていたそうだが、釣りに影響するような雨ではなかった 
時計を見ると、昨日打ち合わせた出発の時間より2時間は早い、普通ならそのまま沢の様子でも 
見に行って朝食を取ってと言うことになるのだが、その日は仲間の一人が突然 
「早く出発しないといけない」と言い出した、普通なら早すぎると文句が出そうなものだが、友人は 
不思議と逆らう気にもならなかったらしい、他のメンバーもそうらしく支度を始めていたらしい 
隣にテントを張っていた仲間にそれを伝えに行くと、此方も全員起きていて出発の準備をしていたらしい 
が、誰もそれを不思議とも思わなかったのが今考えると不思議だと友人は言っていたが、 
とにかく、そんなこんなで予定時間よりかなり早く朝食も取らずに出発したらしいのだが、 
次のポイントに向かうために斜面を登ったとたん、水音がかわったので沢の方を見ると 
川の色が真っ茶色になって、水位が上がりキャンプを張っていた岸も激流に飲み込まれたらしい 
そのときになって、後少し起きるのが遅かったら、出発するのが遅かったら荷物をすべて失っただろうし 
下手をしたら死んでいただろうと、ぞっとしたらしいです、しかしあのとき、なぜ隣のテントに居た人まで 
全員が計ったように同じ時刻にとび起きたのか、友人が出発時間にもならないのに出発しようと 
言い出したのか、そして誰もそれに異を唱えなかったのか、どう考えても不思議だと今でも言っています。 

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