雪の日の話

615 :雪の日の話1/2 :2009/02/23(月) 14:26:53 ID:pCJQz0LmO
雪降ってる日になると思い出すことがある。 
もう十何年以上も前だから記憶が定かじゃないんだが、 
俺の爺さんの家はすごい山ん中にあって、雪が降るとテレビの映りも悪くなるから、 
楽しみっていったらスキーとかソリしかなかった。 
で、兄貴とふたりで爺さん家の庭先から少しいったとこの山?丘? 
まあそんな深くないとこでいつも遊んでた訳なんだが、ある日、 
「もうちょい奥いってみっぺ」 
といわれて、着いてくことに。 

兄貴とふたりひとやま、ふたやま越えて、凄い斜面見つけて、楽しく滑ってた訳なんだが 
何しろ回り一面、真っ白いもんだから帰り道わからなくなって、迷ってるうちに夕方近くになり 
泣きべそかいてたら、近くに明かりが見えて、とにかくあそこまで行こうということになった。 

山越えてくと、爺さん家に作りのよく似た家。囲炉裏とか縁側とか土間とかある古いやつね、 
今なら気味悪いって近づかないかもしれないけど、そん時はもう寒くて心細くて 
とにかく誰かに会いたくて、俺たち、戸をガンガン叩いて、「助けて」って。 

中から人の良さそうな婆ちゃんが出て来て、俺たちはほっとした。 
婆ちゃんは俺達をかわいそがって、すぐに中に入れてくれた。 
電話もあるし、テレビもあるし、何より小綺麗で、幽霊屋敷とかじゃなさそう。 

どうやらここは結構町から離れた村?らしい。爺さんの名前をいうと、電話してくれて、 
今日はもう遅いから、ここに泊まれといわれた。 

夕飯の前に風呂入れってんで、足入れてみたらまだ水。 
婆ちゃんきっと沸かすの忘れたんだなと思って、俺はそのまま服着て、兄貴のいる部屋に戻った。 

そしたらジャンパーとか靴下脱いでくつろいでたはずの兄貴が、強張った顔でがっちり着込み、 
帰り支度をしてる……今日は泊まる予定なのに。 

で、俺が顔見た途端、血相変えて「帰るぞ!」って……。 
何が何やらわからないけど、俺は兄貴のいうことに従い、帰り支度を始めた。 

二人ともまだ子供だったけど、兄貴はいい加減なことをいう奴じゃない。 

多分、何かあったんだと察しがついた。 

でも婆ちゃんには一応、挨拶とかしないとといっても、兄貴は聞く耳を持ってくれない。 
仕方ないから、そのまま土間から出てこうとしたら、背後から声をかけられた。 

「どこ行くの?」 
って。 

振り向いた先には台所、その奥に風呂がある……引き戸は全部開けっ放しだった。 
風呂には婆ちゃんが浸かってた。服のまま。水に。顔色はまたえらく悪い。というより土気色だ。 

(普通じゃない……) 
叫び出しそうになった俺をシッと制止した兄貴は、スキー板を見せながら、 
「ちょっと滑ろうと思って」 
えらくにこやかに答えた。なんつーか、ものすごくGJと思った。 

そう、と婆ちゃんは答えて、俺達はゆっくりと外に出て、庭先、家が見えなくなったところで 
猛烈ダッシュして、家とは正反対の方向に逃げ出した。 

遭難してもおかしくない状況だった訳なんだが、運よく探しにきてた親父たちの翳す 
松明の明かりを見つけて、無事、爺さん家に帰ってこれた。 

後から聞いた話だと、あそこらにはもう廃屋しかないとのことで、人も住んでないとのこと。 
あの婆ちゃんのことは未だわからずじまい。 
少し落ち着いてから兄貴に、「なんであの家変だと思ったの?」って聞いたら、 
案内された部屋が仏間で、変だなと思いつつ、寝転んでたら、よく仏間の天井に飾られてる 
故人の写真の中にあの婆ちゃんを見つけたんだと。 

あとポケベル?運よく電波がチョビチョビ入り、爺さんに連絡してくれたはずなのに 
(れんらくくれ)て何回も間を置かず入るから、何か嫌な予感がしたそうな。 

まあ、普通は俺達のした行動の方が危険なんだろうけど、あん時はどうだったんだろ? 

ただな、服着たまま冷水に浸かる婆ちゃんの夢、雪降ると未だに見るんだよ。 
トラウマからくる単なる夢ならいいんだけど……その夢で兄貴と俺、大人になってんだよね。 
逃げる時、車で逃げてるし……時々聞く、続きものの夢ってやつなのかな? 

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