厄払い

920 :元登山者:2008/02/05(火) 11:59:28 ID:ZY2n/VtL0
聞いた話です。 

祖父から聞いた話です。 
私の祖父は昔の国鉄に勤めており、車掌をしていたこともあります。 
ある年の冬、大雪が降り祖父の乗る汽車が雪崩で立ち往生した 
ことがあります。 
普段であれば乗客に遅延の理由を説明したり、遅延証明を書いたりと忙しいのですが、そのときは夜汽車だったので乗客はおらず、祖父は車掌室で暇を潰していたそうです。 
それにも飽きたので「今のうちに掃除とかしとくか」と 
思った祖父は客車に行き、忘れ物のチェックなどをしていました。 
座席の下、網棚などを見て回っていると、網棚の隅に箱がありました。 
紐で縛ってあり、開かないようになっています。 
「ん、忘れ物かな?」と思い、箱を持って運転手の所へ行こうとしたとき 
後ろから「あの・・・」と声をかけられました。 

「はい?」と振り返ると30くらいの着物を着た男性がいました。 
「それ、私の忘れ物なんです。すみません、ご迷惑をおかけしました。」 
「ああ、いえ、どうぞ・・」と驚いていた祖父が渡すと 
「ありがとうございます。」男性は箱を受け取ると降りて行きました。 
「怪しいな・・・」と思った祖父も汽車を降りて男性を探しました。 
駅員に「着物の男を見なかった?」と聞いても「見ていない」との答えしか返って来ません。「変だな」と思ったそうですが、「地元の人なんだろうか?」と思った祖父は探すのを止めて汽車に戻りました。 
翌朝、線路が復旧するまで時間がかかるとの事だったので、祖父は村へ食事に行きました。ある食堂に入ろうとしたら張り紙がありました。 
「尋ね人」と書いてあり、その下には特徴と似顔絵がありました。 
失踪したのは去年、山に埋蔵金を掘りに行くと言い行方不明。 
その似顔絵は昨晩、汽車にいた男性、そのものだったそうです。 
食堂に入り、女将さんにその事を言うと 
「ああ、駅裏の山に入ったままでね。なんでも、山賊が金を埋めたとかって話があってね。それを探しに行ったままなんだよ。地元の人間は入ろうともしないけどさ。」 
「なんで入らないんですか?お宝があるかもって話なのに?」 
「あの山はね、神隠しに遭うんだよ。あの男は町から来たから知らなかったのかも知れないけど、処刑された山賊の祟りとか、昔、合戦があったとか。 
あまりいい話がないしねえ。」 
「じゃあ、あの男性は一体?」 
「神隠しにあっても、お宝を探してるんじゃないかい?欲は怖いねえ。」 
女将さんはそう言うと、「厄払いだ」と言って祖父に熱燗を振舞ったそうです。 

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