風の話

レスくれた方々ありがとう。地味な話なんで退屈かと思ってた。 
体験談しかかけないしあまり派手な体験は無いので、似たような地味な話ばかりだけど 、 そんなのでよければ。 

長くなったので二つに分けます。 

これは高校のときの話。 
うちの近所には山とは名ばかりの小高い岡がある。 
高校の時、学校への提出課題であるスケッチ画を、その岡では一番見晴らしの良い 小さな崖の上で書いていた。 
崖はそれでも五mほどの高さがあり崖下は川が流れていて、時折強く吹く風に 崖上の竹林が揺れては、 
葉を川へと舞い散らせていた。 
自分は手間取った課題のスケッチがようやく終わり、風に飛ばないよう書いたスケッチ画を画板に挟んで草地に寝転がった。 
適度に強く吹く夏の終わりの風がとても心地よかった。が、そろそろ日も西に傾いてきている。 
そこで山を降りようと 画板を持ち上げた途端、挟んでいたはずのスケッチ画が音を立てて滑り落ちた。 
どうも画板の紐の結びがまずかったらしい。 
あわてて拾い集め、最後の二枚というときに風がひときわ強く吹いて、 
その二枚が風に吹き上げられて宙を舞い崖から外へと飛び出した。 

川へ落ちる!!! 

そう思ったとき、意識するよりも先に声が出ていた。 
「頼む!落とさないで!」 

風は山から崖下へとずっと吹いている。 
風に舞い上げられた竹葉もスケッチ画も、今まさに崖下へ舞い落ちようとしていた、はずだった。 
なのにそう叫んだ途端、自分は目を疑った。 
いったん崖下へ落ちかけたスケッチ画二枚が、大きくカーブを描いて浮き上がるのが見えたから。 
咄嗟に「それをここへ!」と請うていた。 
そしてその言葉とほぼ同時に、浮き上がったスケッチ画は風に乗ったまま、自分の足元へ吹き寄せられ、落ちた。 
自分のその時の感情は、驚きと嬉しさと嘘だろ?という気持ちがごちゃ混ぜになって、なんと言い表せば良いのか判らない。 
ただ急いで足元の二枚のスケッチ画を画板に挟み直すと、何にかわからないけど 
ひたすらに幾度も、ありがとう、と、自分でも判らない何かに向かって言い続けていた。 
帰りしな、風向きが変わったのかと振り返ったが、竹葉は相変わらず崖の下へと舞い落ちていた。 

ただそれだけなんだけどね。 
偶然かもしれないし、もしかしたら風に詳しい人から見たらそういう風の吹き方は、よくある事例なのかもしれないけど。 
自分はとても嬉しかったし、とても不思議な心持がした。 長文スマン。 

前の話へ

次の話へ