片手には背丈以上の長さの巨大な鎌

300:06/26(火) 01:37 P7AR9VeS0 [sage] 
もう20年以上前のことかな。 
当時はオフロードバイクで、いろんな林道を走り回ってた。 
確か秋だったと思う。 
妙義荒船林道という未舗装路をひとりで走っていた。 
確か群馬の安中あたりから軽井沢に抜ける深い山の中を抜ける結構長い未舗装路だ。 

時間はもう夕方。 
何度か通っている道だったが山奥で日が暮れたら洒落にならないので、結構飛ばしていた。 

軽井沢まであと数キロというところで、かなり先に見えるコーナーに人らしきものが立っているのが見えた。 
こんな時間に、林道に人!? 
ちょっと焦った俺は、その人影が近づくにつれ、もっとビビることになる。 

そいつは、編み笠を頭に被ったいかにも田舎風の格好だったが、片手には背丈以上の長さの巨大な鎌を持っていたからだ。 
そう、まるで西洋の死に神が持っているようなヤツだ。 
そして、そいつは道を塞ぐように立ちはだかりやがったのだ! 

半ばパニックなりつつも、きっと地元の人だと自分に言い聞かせ、そいつの前でバイクを止めた。 
「この先は行けないよ」とオヤジ。 
「どうしてですか?」と俺。 
「崖崩れで道が塞がってる」 

軽井沢までもう数キロのはず。 
夕暮れだし、また来た道を延々と帰るのがイヤだった俺は、「バイクだから通れるかも知れないので、行ってみます」と言い、一礼してバイクを走らせた。 

すると、すぐに大規模な崖崩れに遭遇。 
通過を断念し、仕方なく引き返すことにしたのだが、あのオヤジにまた合うのが気まずい、というか気味が悪かった。 
しかし、引き返す途中、どこにもあのオヤジがいない! 
崖崩れ現場までの往復時間なんてたかが知れている。 
そういやオヤジのいた場所に、クルマなんて止まっていなかった! 
どこの林道でも、普通地元民はクルマで入ってくるはずなのに! 

どんどん日が暮れていく中、俺は滅茶苦茶恐くなって、狂ったようにバイクを飛ばした。 

結局、俺は無事に国道18号へ出ることができたんだが、あの巨大な鎌を持ったオヤジの声とか顔をはっきりと思い出すことができなくて、すごくイヤーな気分だった。 

…それから数年後、バイク仲間達があの林道に行こうと誘ってきたことがあった。 
肝試しツーリングだと言う。 
「何年か前にあの林道で自動車の事故があったらしい。崖から転落したらしいんだけど、なんでも運転手の首が…」 

俺がそのツーリングを断ったのは言うまでもない。

前の話へ

次の話へ