人影

144:携帯 06/07(木) 22:52 ut/Dafm2O [sage] 
二年前に彼女とS高原にボードに行ったんです 
そこはいくつかのゲレンデが横並びに点在してて俺達は1番端の比較的初心者向けのゲレンデ側に宿をとりました 
と、いうのも彼女が初心者だったので。 
一日目はそのゲレンデで滑り大分馴れた様子だったので「明日は違うゲレンデに行こうか」なんて話してました 

翌日起きてみると霧で全く先が見えない状態 
リフトも運転を見合わせてるくらいで 
「こりゃ無理か」 
宿で昼ぐらいまで時間潰してると宿の人がリフト動き出したことを伝えにきてくれた 

出ると確かに天気は回復していた 
ゲレンデ間の移動はバスがあったので行きはバス 
帰りは林間コースを通って元のゲレンデに帰ってくる、と予定を立てました 

山の天気は変わりやすい。 
中級者ゲレンデで滑ってるとまたしても霧が 
「そろそろ戻ったほうがいいかな」 
そう思ってリフトに乗り林間コースに向かいました 

リフトに乗ってる間にどんどん天気は悪くなり林間コースに入る頃にはふぶいてきました

林間コースに入るために頂上まできたので 
そのゲレンデの麓まで降りるためには上級者コースを通る必要があり 
視界も悪くなっているので彼女にはまだ無理だと判断したので 
予定通り林間コースを抜けることにしました 
林間コース自体は連絡道のようなもので距離はあるが初心者レベルでした 

しかし少し滑りだすとますます吹雪は強くなり、本当に5m先も見えなくなりました 
コースが右に曲がっているのか左に曲がっているのかもわからなくなった 
「やばい」内心焦り始めた 
彼女も不安はピークに 
少しでも離れるとまずいと思い、最初は彼女に合わせて滑っていたが 
彼女を背負い脇に板を挟むというかなりの荒業をしながら滑ることにしました 

少しずつ少しずつ滑っていたが何も見えなくなってきて 
「止まったほうがいいか」と思った頃です 
いつの間にか前にうっすら人影が 
「人だ!この人についていけば!」 
そう思って離されないように体もきつかったけど必死でくらいついていった 

その人影は全く上体がブれず「滑り上手だな」なんて思ってました 
それだけ上手なのに彼女を背負いゆっくり滑らざる得ない状態の俺と距離が離れない 
近づくこともなければ離されることもなかった

10分か20分か、そんな調子で滑っていた 
すると何か音が聞こえてきて、それがゲレンデのアナウンスの声だとわかり始めた頃 
少し視界が良くなってきました 
「現在、強風に伴う吹雪によりリフトの運転を見合わせております」 
そんなアナウンスでした 

はっきり聞こえるようになったぐらいで元のゲレンデに着きました 
ゲレンデの麓の宿が見えるくらい視界が回復していて 
彼女を降ろし、さっきの人影を探した 
ゲレンデには人ひとり居なかった 
ゲレンデに着く直前まで前にいたのに 

「なぁさっきの人もう降りたのかな?」と彼女に尋ねると 
「人って?」 
「俺らの前ずっと滑ってた人だよ、俺あの人についていったんだよ」 
「私も前ずっと見てたけど誰もいなかったよ? 
て、いうか話しかけてたのに全然返事してくれなかったからすごい不安だったよ」 

彼女に話しかけられた覚えは全くありませんでした 
あの人影は何だったのでしょうか 
無事着いたから良かったけど

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