山行

65:06/05(火) 00:19 MWtXj6wzO 
もう20年以上前の事だから 
それが丹沢だったか、身延であった気もするし、大菩薩であったような気もする、失念スマソ 
とにかく高校二年のときの山行だったと覚えてる 
その日は土曜日で、俺たちたった三人の弱小山岳部は土日二日の参考を計画していた 

確か三時半くらいに、登山口に向かうバスの出る駅で待ち合わせる予定だった 
その日は麓で野営し、翌朝早くに頂上に向かって登る予定 
俺とAは予定通り駅で落ち合った 
もう一人のBは、その日は補修があって、終わり次第、部室で着替え、 
現地に合流するばずだった 
先に着いた俺たちは、夕飯のカレーをつくりながら、Bの到着を待っていた 
けれどいくら待ってもBはあらわれなかった 
バスももう終わっている時刻だ 
一泊二日の予定だから、それほど荷物があるわけではないけれど、それでも俺たちは、Bの無責任さをなじりながら、なぜか部室に常備されていたウィスキーをチビリチビリやっていた 

その野営地、近くに神社があり、その少し下を小川が流れている 
一晩テントですごすには格好の場所だ 
いいかげん酒もまわってきて、調子に乗った俺たちは、その神社に忍び込んでみようという事になった 
夕方お参りしたときに、閂だけで、鍵が付いてないことも知っていた 

中は真っ暗で、懐中電灯を向けると、直径30㎝くらいの古い鏡があった 
その前に大きいが、すすけた鳥の羽があった、暗かったからよくはわからないが、たぶん元は白ではないか 
その他にはまわりにはられた何食かの布の幕? 
俺たちはもの珍しげに中を見て回った 
と、とつぜん、ドン!、と 
それはクマや動物が壁に当たるという感じではなくて、何か下から突き上げるような感じ 
えっ、と思って俺とAは固まった 
そしてまたドン、と 
またドン、ドンと 
はっきり言ってあんなに怖かったのは初めてだ 
俺は持っていた懐中電灯を落とした 
その拍子で灯りが消えた 
俺もAも半ば腰を抜かした状態でそのばにへたりこんでいた 
出ようにも暗くて出口がよくわからない 
と、思っていると今度は鏡を置いてある台が、まるで人が拳で叩くようにダン、ダン、ダン! 
と 
俺、生まれて初めて悲鳴というものを上げたんじゃないのか 
生まれて初めて人の悲鳴、Aの、を聞いたんじゃないのか 

それでも、やっとの事で外にころがり出た俺は、まっしぐらにテントにもどって頭からシュラフにもぐり、それでもなんとか朝を迎えた 
Aも少し後だが戻ってきた

翌朝、俺はAを置いて一人で戻ってきてしまったことに後ろめたさを覚えながらも予定通りその日の山行を実施した 
大変だったのは家に帰ってからだった 
帰ると母親が青い顔をしてでむかえてくれた 
その日、一緒に行くはずだったB 
列車に間に合うように、よほど慌てていたんだろう 
赤信号を無理に渡ろうとして、車にはねられたそうだ 
ザックをしょったまま 
だけど、相手方トラックだったそうで即死だったそうだ 
なじったりしてすまなかった 
きっとお前もいきたかったんだよな、ゴメンな 
いっしょに登ったA、翌年、大学入って、新歓パーティーで富士の八号目から六合目まで滑落して首の骨折って死んだ 

おれさびしいよ

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