雪山

907 :1/2:2007/01/28(日) 15:28:40 ID:Ac7I32730
煙草ネタで思い出した事を 

小学生の頃、父親と2人で雪山へ行った 
しょっちゅう行く山だったから、自分も慣れた物で1人でさっさと登って行っていた 
(父との約束は、大きな曲がり角の前では必ず待つ事、まっすぐな道なら(父が目視出来る距離なら)先に行っても良い) 

さすがに雪山となると、登山客もいつもより少なくて時々擦れ違う人はみんな重装備で、まさに「山男」みたいな人ばかり 
子供だった自分は、みんなに「すごいな!」「頑張ってるねえ」とか優しくされて調子に乗っていた 
ちなみにこの時、父親とは15メートルくらい離れていたかと思う 

と、突然吹雪いて来た、山ではよくある事だけど一気に目の前が白くなって、風の所為で身体がフラフラ揺れた 
さっきまで少し前を歩いていた山男の人たちの姿も見えなくなった 
急にひとりぼっちになった気がして「おとーさーん!」って叫んだ 
でも風に掻き消されたのか、返事が無かった 

急いでさっき歩いた道を戻って行ったのに父親の姿が見つからない 
「おとーさーん!」って何度も叫んだのに返事は無かった 

怖くて寂しくて、今まで気にならなかった寒さが襲って来て 
「山で迷ったらウロウロするな」「目立つ色の物を合図にしろ」とか 
父親にいつも聞かされていた事を思い出して、 
その場に立って、手袋(なんか蛍光の紫だった記憶がw)を 
ピッケルの先に付けて「おとーさーん!」って呼びながら振りまくった 

しばらくしたら自分がさっき居た方向(吹雪きはじめた時に居た方向)から 
こっちに向かってくる、父親の姿が見えたんだ 
父親はくわえ煙草をしていた、吹雪いてるのにほっとして「探しに行ったのに、なんで居なかったの?」とか 
「いつの間に私を抜いて行っちゃったの?」とか、必死に質問攻めにした 

父親曰く、吹雪いて来たので急いで自分の所へ行こうと足早に進んだが、自分の姿はどこにも無かったとか 
途中で登山パーティを見つけて声をかけると 
「少し後ろを歩いていた」「自分たちを追い抜いてはいない筈」 
と言われ、急いで戻って来たが、やはり見つからない 
途中で声だけが聞こえたので、「道を間違えたのか?」と探すも見つからない 
返事をしても、聞こえていないのか「おとーさーん!」しか言わない 
そもそも、道以外には雪が1メートル以上降り積もっているから 
ラッセルでもしないと進めない、だけどラッセル跡も無い 

父は「こう言う時は煙草でも吸って落ち着こう」 
「声が聞こえてるから生きてる」そんな感じで、煙草に火を点けたんだそうだ 

深々と吸い込んだ煙を吐き出すと、元来た道に狂った様にピッケルを振っている私が見えたとか 
父には「冬の雪山で手袋を外して金属の物を触るなんて自殺行為」 
「凍傷になるぞ」と怒られたのも、今ではいい思い出

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